The VOICE 10th anniversary concert [DVD]

The VOICE 10th anniversary concert [DVD]

タイトル:The VOICE 10th anniversary concert
アーティスト:KOKIA


購入以来、毎週のように観ている。
体が壊れていなければ、是非ともLIVEで観たかった。
きっと卒倒していたに違いない。
(多分前半のLacrima辺りで)
室内で何か作業しながら聞いていても失神しそうになるくらいだから。


出だしから圧倒される。
浄歌
型にはめられたCDの歌声とはまったく比較にならない「生」の声。
(勿論、LIVEもプログラム化されてはいるのだが、そういう意味の型の話ではない)
KOKIAは、その瞬間、KOKIA自身の中に流れている音楽をそのまま声にのせて歌い出している。
譜面や歌詞カードの暗誦ではない。
今、感じている、音、詩、そのものを歌っているのだ。
だから、聞いている人の心に直接届く。
それは言語の体裁を成しているが、それ以前に音であり、リズムであり、響きであり、魂である。
それは到底ロジックでは捉えることの出来ないものなのだ。


KOKIAの歌が「本物」であること、すなわちそれが作られたものでも巧妙につなぎ合わされたものでもなく、本当にKOKIA自身の心の叫び声であることが一番よく解るのは、後半のI believeだろう。
聞いているこちらが息苦しくなってくるぐらい、KOKIAの叫びは悲痛だ。
KOKIAが完全に無心で、自らの歌う歌と一体化している。
その間を隔てているもの(例えば思考)はそこには存在しない。
統制され、抑えられたCDの音源ではこのすさまじさは伝わらない。
KOKIAの歌はあんなものではない。


私の個人的なお気に入りは後半最初のメドレーの中で歌われている、U-cha-cha
気持ちを、感情を、心からの思いを、そのまま伝えようとすると、言葉はむしろ障害となる。
その魂の叫びは言葉を離れて叫びとなる。
それは現実界、或いは「ものそのもの」の世界に限りなく近い。
オフコースの『言葉にできない』、FIRE BOMBERの『ANGEL VOICE』(まあ、こっちはクジラと歌っているからな)にも通じる、言葉を超えたその先にあるものの世界への到達。
LIVEでは以前から歌われていたらしいが、音源として収録されたのは初めてのようだ。
今回はメドレーだったが、是非フルサイズで聞きたい。


メドレーと言えば、ぬくもりがメドレーの中に入っていたが、こちらもフルサイズで聞きたかった。
最も聞きたかったCメロの部分が歌われていたので十分満足であったが、この曲自体があまりにも素晴らしいので、メドレーの中の1曲とされるのはあまりにももったいないと感じた。


大事なものは目蓋の裏は、ちょっと走ってしまっているかな、という印象を受けた。
メドレーの後で、少しテンションが高くなりすぎて抑えが効かなかったのかな、と。
あと2テンポほど落として、音の当て方ももう少し低く抑えた歌い方の方が良いと個人的には思う。
いい歌だけに、もったいない感じがした。


il mare dei suoni,everlasting辺りは、聞いていると意識がどこかに飛ばされそうになる。
KOKIAの声の最も美しい部分がじっくりと聴けて良い。
(そう言う意味では冒頭の穏やかな静けさ〜浄歌もそう)


そして、小さなうた
現実はつらく、そして哀しい。
思い通りにならないことがたくさんある。
苦しみに満ちあふれている。
だけど、それでも、今ある自分とこの現実を肯定し、現実と向き合い、前を向いて生きていこう。
KOKIAの感じた苦悩、迷い、苦しみ。
しかし、その中で得た力、決意、そして自分に、皆に向けられた応援のメッセージ。
それら全てがこの短い歌に込められている。
この10年間でKOKIAがたどり着いた境地。
そして、それらが心から感じたKOKIAの嘘偽りのない気持ちであること、それがこの「生」の声を通して伝わってくる。
何か作業をしながら聞いていても、この歌の場面になると手が止まってしまう。
その1言1言、1音1音をしっかりと受け止めなければならないと強く感じてしまう。
そして何よりも、あまりにも美しい歌を前に、時間が意味をなさなくなる。


このLIVEを聞いてしまった人は、この素晴らしい歌を広めずにはいられなくなる。
KOKIAエヴァンジェリストたるべくありとあらゆる手段を用いてでもこの歌を聴いてもらいたいと思ってしまう。
このDVDに収められたLIVEにはそれだけの力がある。
かくいう私も、この歌を聴いてもらいたいが故に、このDVDそのものを知人にそのままあげてしまった。
自分一人で抱えておくにはあまりにももったいない。
この素晴らしさは一人でも多くの人に伝えなければならない。


KOKIA、ありがとう。
貴方の歌のおかげで私はまだ生きています。