下流大学が日本を滅ぼす! (ベスト新書)

下流大学が日本を滅ぼす! (ベスト新書)

書名:下流大学が日本を滅ぼす!
著者:三浦 展


下品。


↑とだけ書いたまま半年も放置していた。
著者には非常に失礼なことをしているわけだが、「下品」なものは「下品」なのであるから仕方がない。
著者の憤りは解らなくもないが、もっと「上品」な批判(ではなくて非難だな、これは)を私は望む。
(まあ、私のために書いてくれている訳ではないのだが)
敢えて挑発的に書くにしても、書き方はあるはずである。
読んでいて非常にいらいらした。


しかし、主張そのものは正しい。
結局この国の教育を駄目にしたのは、親の子に対する「甘やかし」なのである。
それが反映されているのが、他の先進国と比較しても異常なほどに高い進学率であり、著者の言葉を借りれば「下流大学」が水準に達していない大量の生徒の受け皿になったことがそれを助長したのである。
今の若い世代は様々な手段で親の世代の財産を食いつぶしているが、その中で最も大きなウェイトを占めるのが、この「進学」による浪費だろう。
指摘は正しい。
しかし、品がない。
くどい。


さんざんいらいらさせられながら、本書を読んでいたが、一番最後の「提言」の部分で本書の(私の中の)評価が急上昇した。
奇しくも私が主張してきた(といっても私は著者と違って無名な一市井に過ぎないのだが)内容とほとんど同じだったからだ。
(表現は違うが、主旨はほとんど同じ)
ポイントは、複線化と早期スクリーニングにある。
イメージは現在のドイツ式の教育制度である。
早い段階で進学グループと技術習得グループに分ける。
進学の道は常に開かれているが、必ずある一定の水準の学力審査をクリアしなければならない。
そして、ここが最も重要な点であるが、企業は学歴で採用の制限を設けてはならない。
制限とは建前の部分だけではなく、実際の採用の実績に於いてもそれを設けないことを徹底しなければならない。
しかし、これは大して危惧することではないはずである。
技術習得グループは、進学組と比較して、しっかりとした技術を身につける。
そういう人材は、中途半端に小賢しいだけで何も出来ない人間よりもよほど役に立つはずである。
従って、まず変えるべきは教育制度ということになる。
(この点に関しては、私は以前と考え方を変えた。以前は私は日本の教育制度が変われないのは企業の採用制度のせいであると考えており、まずはそこから変わらなければならないと考えていた。しかし、上述したように、問題は硬直的な教育制度の方にある。現代の企業は世界規模の競争にさらされており、「本当に使える人材」を求めている。いつまでも学歴採用にこだわっている企業は自然と淘汰されていくだろうから、結果的には実力採用の企業が多数を占めるようになっていくはずだ)
というような、私のこの国の教育制度改革に関する意見と、著者の「提言」とは大筋のところ一致しているのである。
いくら文体が気持ち悪くても、その視点の鋭さと提案の素晴らしさは認めなければならない。


本書を読むとすれば、「提案」の部分だけで良い。
だが、この「提案」は、本書を買ってでも読むだけの価値がある「提案」なのである。