久々に夢を見た。
かつて住んでいた木造の古い一軒家を思い出していた。
部屋割りを、その経緯も含めてしっかりと思い出せることに驚いた。
今の今まですっかり忘れていたのに。
いや、想起することすらなかった。


抑圧していたのだ、恐らく。


あんなに出たがっていた家なのに。
あんなに嫌いだった家族なのに。
何一つ良いことなんてなかった、そう思い込んでいたのに。
温かく、そして幸福で満たされているように感じられた。


思い出はずるい。
年月を経ると共に削り取られて、そうやって美しい部分ばかりが残っていく。
今が苦しければ苦しいほど、思い出はその輝きを増していく。


中学の時、とある事情から、祖父母の家に同居することになり、その借家からは出て行くことになった。
1回だけ、近くを通りかかったときにまだ残っていることを確認したことがあるが、それがいつのことだったか、まだその家が残っているかは分からない。
おそらく古い家だったから、既に建て替えられてしまったのだろう。


祖父母の家で、私は最も多感な時期を過ごした。
肝心の祖父母はそこにはいなかったのだが。
その家もまた、老朽化と様々な事情から取り壊されて、今は跡形もない。
あの庭が、好きだった。
小学校の友達とよくドッジボールをしたあの庭が。
祖母と庭の手入れやバドミントンをしたあの庭が。


ああ、思い出が溢れてくる。
この洪水を止める手段が私にはない。


みんな<わたし>が捨て去ったものたちだ。
いったい誰が、それを拾い集めてきたのだろう。
いったいどこにこんなにもたくさんの思い出が残されていたのだろう。
いったい、何を。
私は何を望んでいるのだろう。