美しく危険な魂たちの哀歌

朝がまたくるから (花とゆめCOMICSスペシャル)

朝がまたくるから (花とゆめCOMICSスペシャル)

書名:朝がまたくるから (花とゆめCOMICSスペシャル)
作者:羅川真里茂


■評価:優
  物語:◎ 情報:− 斬新さ:○ 意外性:○ 含意の深さ:○ ムーブメント:◎ 構成:○ 日本語:○
  難易度:易 費用対効果:◎ タイトル:−
  お勧め出来る人 :美しい物語に心洗われたい人
  お勧めできない人:−


■所感
 犯した罪は許されることはない。
 償いに終わりはない。
 背景や状況は言い訳にしか聞こえない。
 理解されてはならない。


 出来るだけ周りの人とかかわりにならない。
 理解されることを期待しない。
 心を閉ざし、瞳を逸らし、耳に蓋をする。
 そうしてようやく、平静を保てる。


 安らぎはない。
 慰めもない。
 休まるときもない。
 ただ、無間の闇だけが広がっている。


 一筋の光。
 求めていた光。
 唯一の光。
 求めてはならないひかり。


 あなたに安らぎを。
 せめて束の間の安らぎを。
 心穏やかなる一時を。
 そして。
 

 生きて欲しい。
 自分勝手な願いかも知れないけど。
 生きていて欲しい。
 たとえ周りを闇に取り囲まれたとしても。


 わたしがあなたのひかりになるから。


 (葦の穂綿)


 全ての禁忌は意味を失う。
 もう遅い。
 そこから逃れる術はない。
 クピドの矢が放たれた後では。


 理由を付ける。
 言い訳を考える。
 だが全てはむなしく響く
 言葉は何の役にも立たない。


 溺れている。
 溺れている。
 声が聞こえなくなる。
 だんだん暗くなっていく。


 サルベージ。
 歪みは正され。汚れはそぎ落とされ、過ちはかき消される。
 サルベージ。
 急速浮上と人工呼吸。


 信じてる。
 待っている。
 忘れない。
 約束は何の役にも立たない。


 それは二人にしかわからないこと。


 (半夏生)


 不条理。
 あまりにも溢れすぎてどうしようもない不条理。
 世に理はない。
 あるのはただただ事実のみ。


 美しい世界を夢見てこの世を訪れた命たち。
 明るい光に導かれてこの世を訪れた命たち。
 泣いて、そして、
 笑う。


 何かがあるんだ。
 何かしてしまったんだ。
 何か何か何か。
 なんでもないナニカ。


 いつまでもいつまでも、
 あやまちを繰り返し、
 そこから抜け出そうとして、
 あやまちを犯す。


 世の不条理に歯がみし、
 己の無力さに歯がみし、
 犯した過ちに歯がみし、
 唇が切れて血が流れる。


 繰り返される過ち。
 終わらない舞踏。
 定められた運命の上で、
 同じ軌跡を描き続ける。


 羽があっても飛ぶことは出来ない。
 ヒトである限り飛ぶことは出来ない。
 それでも飛ぼうとしてもがき苦しむ。
 やがて力尽きて羽をたたむ。

 
 その軌跡が奇跡を生み出すことを願いながら。


 (冬霞)