14歳からの社会学 ―これからの社会を生きる君に

14歳からの社会学 ―これからの社会を生きる君に

書名:『14歳からの社会学 ―これからの社会を生きる君に』
著者:宮台 真司


大学時代のゼミの同期の方から、「あなたの思想は宮台に似ていてる」と言われたことがある。
私は自意識過剰なので、こういう発言を聞き逃すことが出来ない。
しかも、私の中の宮台イメージは、小林よしのりのおかげで最低のものになっていたから、これは如何にということで、慌てて1冊読んでみた、というのがもう2年も前の話なのか。
(その時の書評がこれ)
で、その時の結論としては、

私が似ていると言われたのは「教育」に関する意見だったのだが、この人の教育論ってどんなんだろ

と書いてあるので、おそらく判断保留となったのだろう。
(自分の書いたことにぐらい責任を持て)


だが、本書を読んで結論は出た。
この人が主張する「理想」の社会は、私が思い描いているそれにそっくりだ
結局その方のご指摘は正しかったのである。
ううん、恐るべし。
ちなみにその方は、以前東京でお会いするお約束をしてお会いできなかった方(その時のいきさつは東京レポート2-5参照)と同一人物。
ううん、残念。


結局この人の思い描いている理想社会は一種の「エリート主義」で、ただしエリートはエリートとしての自覚を持ち、率先して犠牲とならなければならない、すなわち「ノーブレス・オブリージ」である。
そして、この「エリート」を育てるために、教育を複線化する(勿論これには各人に最適な「教育」を
提供することこそが各人にとっての幸福であると同時に社会にとっても有益であるという功利的な目的もある)。
色々と述べているが、その施策の肝はここにある。



相違点は、宮台は大衆に対する不信感をあからさまに示しているのに対して、私は梅田氏が主張する「不特定多数無限大」の力(「みんなの意見」)を信じて良いと考えていることぐらいか。
それとて、梅田氏の「みんな」がある水準以上の知的階級を指しているのを「エリート」というふうに捉えるならば、その違いは無視できるほどのものになる。
(私も単なる「衆」は「愚」であると考えている)


というように、本書は「社会学入門」という形をとりながら、実際には宮台氏の考える「理想の社会」の宣伝書となっている。
この書に関しては、私自身があまりにも著者と近い立場にいるので直接的な評価は控えさせて頂きたい。


単に費用対効果、解りやすさ、情報量、新規さなどの面で評価するならば、良書の部類に入ると思われる。
また、何よりも本書は「宮台真司入門」として最適である。
これまで彼はさんざん誤解されてきたが、本書でようやくその思想が理解されるようになるだろう。
(おそらく宮台氏が一番書きたかったのは、本書のような書であると思われる)
この書評執筆時点(2009/07/22)では氏の『日本の難点』がかなり売れているようだが、私は敢えてそれを読みたいとは思わない。
内容が想像できるからである。
本書を読めば、それが解る。