基礎から学ぶシステム仕様書

基礎から学ぶシステム仕様書

書名:基礎から学ぶシステム仕様書
著者:秋本芳伸、岡田泰子


良書。


概要仕様書、基本仕様書、詳細仕様書など、システム開発に必須の各仕様書について、それぞれの役割、あるべき姿、そして具体的な作成方法などが平易に解説されている。
勿論これ1冊読んですぐに仕様書がかけるようにはならないが(仕様書作成の作業は非常に泥臭いのである)、仕様書を書くために必要な前提知識は本書1冊読み通すことで確実に身につけることが出来るだろう。


プログラマにとってのいわゆる「仕様書」は本書でいうところの「基本仕様書」である。
そして、それは良く言われるように、プログラマにとって「バイブル」となるべき最重要書類なのだが、それが「バイブル」として機能するためにはどういう要件を満たしていなければならないか、ということがしっかりと説明されている点が本書の良いところである。
「基本仕様書」は「概要仕様書」と矛盾していてはならず、また、全ての項目をカバーしていなければならない。
更に「概要仕様書」は、(顧客の)要求を全て網羅していなければならない。
そうしなければ、「基本仕様書」がバイブルとなることは出来ない。
「『仕様書』通り作ったのに作り直しになった」といったどたばたは、ここに起因する。


このような過ち、即ち、仕様がそもそも要求を満たしていないということはあってはならない。
そのために必要なものは、要求がしっかりと仕様に落ちているか追跡する手段であり、それを「見える化」したものが「要求仕様追跡マトリックス」である。


本書を通して読み、学習することで、以上のような仕様書に関する「基礎」知識を身につけることができる。
これは、上級SEなどの仕様策定者のみならず、最下層のプログラマも心得ておくべきことであると考える。
理由は2点。
1つは、今は言われた仕様通りのものを作っているだけのプログラマも、そのうち仕様を作る側に立つことになるのでその時までに仕様書に対する基礎知識を身につけるべきだから、という点。
もう1点は、示された仕様書を批判的に読み、「仕様不備」を早めに見つけることで、後の「仕様変更」や「仕様追加」を避けることが出来るから、という点である。
結局、仕様について理解することこそが、己が身を助けることになるのである。
システムエンジニア必読の書。