書名:GAME NOVELS キングダム ハーツII Vol.1 - Vol.4
著者:金巻 ともこ


前作(「チェインオブメモリーズ」ではなくて、'1'の方)よりもよくできているように思える。
まあ、元ネタ(野島一成か?)が良いのであるが、前作よりにもましてその世界観と物語を壊すことなくしっかりと伝え切れている点が高評価のポイント。


チェインオブメモリーズ」では、リクの葛藤が良い物語を紡ぎだしていたが、Ⅱでは、アクセルがかなり良い味を出していた。
元ネタの方では、現れない間に何をしていたか、何故最後になって協力するようになったか、あまり語られなかったが、なるほどこういう解釈の仕方があるのか、と感心した(あるいは著者はあらかじめシナリオを渡されており、その通りに書いただけなのかも知れないが、単なる事実以上にしっかりと心境の推移が描かれていたのでそこは著者を評価すべき点)。
影でソラを支えようとするリクの行動も○。


Ⅱまで読んで思ったことは、「ソラ」というのは、この世界でいうところの「純真無垢で汚れを知らない子ども」(そんなものはいないというのが私の持論ではあるが、ここでは現実の話をしているのではなく、あくまで物語世界について語っているので、敢えてそれを批判する必要はない)なのだなということである。
それは「既に汚れてしまった大人たち」にとって、守るべき貴重な存在であり、我々の生は彼らのような心の美しいものたちを守るためにあるのだということを強く感じさせられた。
(繰り返すが、リアルではなくあくまで物語世界の話、ね)
与えられた力はそのために使うのであり、いつかその力が必要となるときのために、我々は日々研鑽を積んでいるのである。


Ⅰはまだエンターテイメント性が強く、物語そのものにはあまり魅力を感じなかったが、チェインオブメモリーズ→Ⅱの流れについては、哲学的関心を喚起させるものがあった。
この作品もまた、ゼノ完了後(今のペースだと、いったいいつまでかかるんだろ)に
紙々の誰そ彼
に書いてみたい作品の1つとなった。


マイナス点があるとすれば、本筋を重視するあまり、各ワールドを訪れたときのストーリー展開がめちゃめちゃになってしまっていること。
パイレーツオブカリビアン」のワールドなどは、あまりにもひどくて何のことやらさっぱりという状態になってしまっている。
元ネタの方では、各ワールドを2回訪れているのを、(恐らく紙幅の都合で)1回に強引にまとめてしまおうとした結果、このようなひどい状態になってしまったものと思われる。
(各ワールドで発生するディズニーキャラクターとのエピソードに関しては、元ネタの方もややいい加減さが目立つ箇所がある。「ライオンキング」などはちょっとひどい)
この辺りは著者の力量の限界だろう(この点を完璧に書き切れていれば、オリジナルの小説が書けるはずなのだが、残念)。
まあ、本筋の方が悪くなかったので、そこは我慢して読める。


元ネタを飛ばしてノベルだけ読むには、仕上がりとしてやや苦しいが、一度でも「キングダムハーツ」を経験している人なら楽しんで読むことができるのではないか。