リサーチ・リテラシーのすすめ 「社会調査」のウソ (文春新書)

リサーチ・リテラシーのすすめ 「社会調査」のウソ (文春新書)

書名:「社会調査」のウソ―リサーチ・リテラシーのすすめ
著者:谷岡一郎


また、職場の先輩から貸していただいた本。
貸していただいた方には大変申し訳ないのだが、駄本。
くどい。


何がどう無駄かというと、著書が訴えたい層はまずこの本を読まないし、この本に興味を持って読むような人は、既に著者が身につけて欲しいと思っている「最低限のメディア・リテラシー」を持っている。
強いて言えば社会科学を専門としようとしている院生以上にとってはきちんと把握しておかなければならない事柄なのだろうが、そのような高学歴の読者を対象にしているとすれば、やや広く浅い内容になっている。
つまり、どの読者にとっても(この場合の読者とは、本書を手に取らない、或いは何かの偶然で本書を手に取ってみたものの、最初で挫折して結局読まなかったという人々を含む)中途半端なのである。
そういう本の評価はただ一つ、不要。


内容はさして悪くはない。
が、(ところどころ弁解をしているが)著者の愚痴が多すぎる。
「犯罪学」が学問の分野として認知されていないのはまあ、少しは問題があるかな、とは思うけれども、「ギャンブル学」(著者の専門らしい)なるものを正式な学問として認知してもらいたければ、相当な努力をしなければならないだろう。
それをこの国のシステム(確かに著者が糾弾しているように、問題はある)のせいにしても、読者はしらけるだけである。


本書は、素人にとって、「リサーチ・リテラシー」を高めるには役に立つのかも知れないが(確かに勉強にはなった)、社会学の研究者でもない大半の一般人にとって必要なのは、「疑う姿勢」であり、その冷静ささえあれば、それがどう「いかがわしいか」まで知る必要はない。
そして、著者の危惧とは別に、大半の良識ある一般人は、様々な「リサーチ」結果に対して一定の距離をとってそれに接している。
「愚かな大衆」などどこにもいない。
確かにたまに、そういう根拠のないリサーチを真に受けてしまう、「ちょっと痛い人」というのはいるかもしれないが、そのような人は、本書程度の啓蒙ではどうしようもない状態にあるので(そもそもそのような人は冒頭で述べたように、本書のような本を読まない)、やはり本書の存在意義は薄い。


結論。
本書は(大半の人にとって)不要な書である。
どうしても興味のある人(例えば、「え、新聞の世論調査ってそんなに信用できないものなの?」と思ってしまうような人)は勉強のために読むといい。
ただ、流し読みで十分