ウチのシステムはなぜ使えない SEとユーザの失敗学 (光文社新書)

ウチのシステムはなぜ使えない SEとユーザの失敗学 (光文社新書)

書名:ウチのシステムはなぜ使えない SEとユーザの失敗学
著者:岡嶋裕史


読む人によっては良書となりうる微妙な書。


少なくとも現場で働くSEやプログラマにとっては当たり前の事項が多すぎてあまり新鮮味はないかも。
だが、社に籠もってソフトウェアを制作しているエンジニア(ちょうど私のような)にとっては、一読の必要があると思う。
要は顧客とのフロントエンドで何が起きているのかをある程度は理解しておかなければならないということである。


本書はソリューションを発注・受注する際の問題について主に顧客の立場から書いてある。
書いてあることはどれも基本的なことばかりで、目新しい情報は少ないが、「検収時にはしっかりと品質を確認することが大事」「工程に余裕がないプロジェクトでは異常系のテストがまともに行われていないことがある」など現場で発生していることを元に、実際の業務に役に立つ情報が一通り揃っている。


残念ながらこの本を読むだけでは、タイトルから期待される「ウチのシステムはなぜ使えないのか」は解らない。
この本に書かれているごく初歩的なことが出来ていない会社は、既に潰れてしまっているか、ん十億かけて使えないシステムを導入しても会社の屋台骨には影響が出ない超大型資本の企業(そんな羨ましい企業があるのか)であるからだ。
ただ、若い者が実態と原則を覚えるためには十分役に立つ書であろう。
本書に書かれていることは大なり小なり実際に現場で発生したことであり、またこれから起こりうることである。


本書の趣旨からはやや外れている感があるが、最後の章のフィクションは痛快などたばた劇になっている。
その章だけではなく前章通して語り口が軽妙であり、実用書としてはさらっと読めてしまう。
その辺りは良。