プログラミングでメシが食えるか!?成功するプログラマーの技術と仕事術

プログラミングでメシが食えるか!?成功するプログラマーの技術と仕事術

書名:プログラミングでメシが食えるか!?―成功するプログラマーの技術と仕事術
著者:小俣光之


勉強になる本。
プログラムの書き方は勿論のこと、プログラマとしていかに精進し、いかに勉強し、(そして独立した暁には)いかに仕事を獲得していくかが、著者の豊富な体験から語られている。
C言語を専門とされていることもあり、より低層に近い方で、個々のプログラムがどのような影響(例えばメモリ使用や処理速度、オーバーヘッドなど)を与えるかについての知識を身につけることが出来る。


ただし、良書とは言い難い。
オブジェクト指向で書くべきか」「関数・変数名に長い名前をつけるべきか」などのテーマに関して、「TPOに応じて」「適当に」という身も蓋もない結論を述べている点が良くない。
「とにかく何でもかんでもオブジェクト指向にすべだ」などというファナティックな意見も困りものだが(実用性がないので)、「時と場合による」という意見は何も語ってないのに等しい。
真面目に読んでいた読者は肩すかしを食らうだろう。
ではどうすればよいか、と問われれば、「この場合はオブジェクト指向を使うがこういう時は使わない方がいい、こういう時には使ってはならない」という形で具体的な場合分けをすればよかったのである。


本書にはもう1つ問題点がある。
それは、本書で取り上げられている内容が、中級者以上にとってはごく当たり前のことであるが、かといって初心者にとって解りやすいかと言えばそうでもない、どっちつかずになっていることである。
例としてあげているコードが、C言語のネットワークプログラミングであり、経験のない初心者にとってはちんぷんかんぷんである。
明らかに初心者向けの本ではないのだが、中級者以上が求める「突っ込んだ内容」に関してはやや踏み込みが浅いように感じる。
結局本書がもっとも役に立つのは、「情報処理技術者試験などで理論は勉強したものの、実際のプログラミングの経験が浅い初心者に毛が生えた程度の学習者」であり、たまたま私がそれに該当したので私にとって有益だっただけである。
客観的に判断すれば、どっちつかずであり、そういう意味では不要な書であると言わざるを得ない。


本書の著者の主張は一貫性があり、明解である。
しかし惜しいかな、読者に対する意識に欠けているように見える。
優秀な編者がついていれば・・・と思わざるを得ない書である。
が、タイトル(とカバー表)のアホらしさとは異なり、読んで勉強になる書には変わらないので、私と同じような立場にいる者(要は駆け出しのプログラマ)には一読を勧める。