セックスはなぜ楽しいか (サイエンス・マスターズ)

セックスはなぜ楽しいか (サイエンス・マスターズ)

書名:セックスはなぜ楽しいか
著者:ジャレドダイアモンド, Jared Diamond
訳者:長谷川寿一


ええっと。
ちょ、ちょっと待て。
そこっ!勝手にR指定にしない!
そこっ!検索の対象から外さない!
そこっ!フィルターかけない!


「戻る」押す前に著者の名前を見てよ。
ジャレド・ダイアモンドだよ。
あの『銃・病原菌・鉄』のジャレドだよ。
ピューリッツァ賞作家だよ。
そう、これは至極まじめな進化生物学の本なの。
全く、ジャレドにも困ったな。
アメリカではユーモアになるかも知れないけどこの国だと春本と間違われるだけだってのに。


肝心の中身だが、この類の本によく見られる独断と偏見に基づいた「欠陥だらけの神話」に陥る危険性を回避した、見事な科学(反証可能性という点では厳密な科学と言うことは出来ないが)ノンフィクションとなっている。
さすがジャレドである。


本書の特長はその徹底された論理にある。
本書が立つ立場は「個々の生物は全て自らの遺伝子を1つでも多く残すために生きる」という非常にシンプルな原則である(R.ドーキンスの『利己的な遺伝子』を彷彿とさせる)。
本書は、議論の展開にあたり、常にその原則から発し、その原則を離れて飛躍することはない。
例えば「男性(オス)は何の役に立つのか」というテーマでは、著者の願い(何かの「役に立っている」と信じたい)も空しく、冷静に分析した結果「精子の提供」以外に何か「役に立っている」と明確にいえる役割はなく、その行動のほとんどが百害あって一利なしに値する行為であることを証明してしまっている。
その他のテーマでも、常にこの原則の下に論が展開されているため、論旨が明快で議論の展開が理解しやすく、下された結論にすんなりと納得することが出来る。


で、更に肝心なタイトルの疑問に対する結論なのだが・・・。
それは本書を読んで確かめて欲しい。
ここで書いちゃうと誰も読んでくれなくなりそうだから(というより面倒なだけだろ)<あ、ばれた?>。
ちなみに、性交は何故快なのか→そうプログラムされているから、などという陳腐な問い及び回答を展開しているわけではないので、勘違いしないよう。
私個人としては結論も含めて全体的にややインパクトに欠ける内容だったと感じた。
その分トンデモ説に発展している箇所は無く、巷に溢れる説をまとめ、検討し、独自の落ち着いた結論を提言しているので利用価値が高い。
示唆にも富んでいるので読んで損をすることはないと保障する。