格差社会―何が問題なのか (岩波新書)

格差社会―何が問題なのか (岩波新書)

書名:格差社会―何が問題なのか
著者:橘木俊詔


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前著(『日本の経済格差』)よりやや日本語はましになったが、相変わらずひどい。

なぜなら、企業の現状を考えるならば、高賃金の人たちの賃金を保ちながら、低賃金の人たちの賃金を上げることは、現実的には困難であると判断せざるをえません。したがって、高賃金の人に多少の減額があったとしても、その分で低賃金の人の所得を上昇させる努力が必要でしょう。


橘木俊詔格差社会−何が問題なのか』p165 L9〜L12

「なぜなら〜」は「〜(だ)から」で受けなければならない。これは小学生の作文レベルの話である。


本書は大竹&政府の強力なコンビネーション反論アタック(というよりは大竹の強烈なカウンターパンチに政府が相乗りして調子づいているだけというのが正しい実態であると思うが)に対して書かれた再反論の書という位置づけであるが、展開している理論も統計数字も少しも説得力のあるものに成長していない。


せめて教育に関するデータは苅谷剛彦を用いれば少しはましな反論となっていたはずであるが、どうもこの人は苅谷剛彦を知らないらしい(知っていて無視するという心理は私には理解しかねる)。


格差火付け役の再反論がこの程度では、「格差拡大」実在論側の論説はたかが知れているということが予想される。
ここまで一方的だとつまらないのだが。