頼むから邪魔だけはしないでくれ

書名:嫁ハンをいたわってやりたい ダンナのための妊娠出産読本 (講談社+α新書)
著者:荻田和秀


■評価:良
  情報:○ 新規性:△ 構成:△ 日本語:○ 実用性:○
  難易度:易 費用対効果:○ タイトルと内容の一致:△
  お勧め出来る人・用途 :妻の出産の際に夫としてどのように振る舞えばよいか悩んでいる人・夫としてできることの限界を知り開き直る
  お勧めできない人・用途:妻の出産の負担を軽減する方法を探している夫・妻の出産の負担を軽減するために夫としてできることを探す


■所感
 著者はマンガ「コウノドリ」のモデルとなった産科医とのことであるが、同作品の主人公と比べるとだいぶクールというかドライ、な考え方を持っているようである。
 この本は、「ダンナのための」という部分は、まさにタイトルのとおりであるが、本書の知識を生かして「嫁ハン」をいたわってやれるかどうかと言われると、それは少し難しいと言わざるをえない。
 そもそもこの本の(産科医)さんのスタンスは、「出産時に立ち会っているダンナさんは基本的に邪魔」、「クライアントはあくまで妊婦さんと赤ちゃんでありダンナさんには基本興味がない」というものであり、妊娠出産時に夫ができることなんてそんなにはないのよ、というものであるから、この本にタイトルどおりの内容を期待して読むとだいぶ肩透かしを食らわされた気分になるだろう。

 ただ、それでも、妻が出産を控えた「ダンナ」さんは、本書を一読する価値がある。
 妻の体に起きている変化や妊娠・出産のリスク、そして何よりも、この大変なことに直面して自分がいかに無力であるか、ということを自覚することで、自らの卑小さと妻の偉大さを認識し…というと少し大げさであるが、まあ、いい意味で開き直ることで、力の入りすぎない、リラックスした対応がとれるのではないか。ひいてはそれが妻を思いやることにつながるのではないか、そんなことを気づかされる本である。

 出産という大事に向かう妻のためにできることは2つ、1つはなるべく邪魔をしないということ、余計な病気やストレス因を持ち込まない、しかり、余計なことを言わない、しかり。
 そしてもう1つは、いっぱいいっぱいの妻が投げてくるお鍋やら包丁やらなんやかんや(すべてもののたとえですよ)を受け止められるだけの余裕を自身がもつこと。意外と仕事が忙しくて…で妻に「子供が生まれるとき何もしてくれなかった」と非難されるパターンは後者の方ができてなかったパターンかな、と思えてくる。

 コミュニケーションの基本は相手を理解しようとする姿勢から。まずはなんでもよいのでこの手の本を1冊読んでみてはいかが。


■読了日
2017/01/25