執着について
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作者:TONO
■評価:可
物語:△ 情報:− 斬新さ:○ 意外性:○ 含意の深さ:○ ムーブメント:△ 構成:△ 日本語:△
難易度:易 費用対効果:△ タイトル:−
お勧め出来る人 :生きることの意味をぼんやりと考えたい人
お勧めできない人:グロテスクな絵がだめな人
■所感
食は食でも食人の話。
「眠れぬ夜の」の副題通り、読み始めると結末を読むまで眠れなくなる。
というよりは、途中で寝てしまうと夢に出てきそうなので読み終えて忘れてしまいたい、というところか。
些か普段よりも酷評なのは私自身が貫徹して読んだから、ではないのでお間違えなく。
何せ、人がばたばたと死んでしまうのだ。
しかも大概が無残な有様で。
あまり気持ちの良いものではない。
だが、ありふれた「生」の中で「死」が特別な意味をもって我々に捉えられるように、
ありふれた「死」の中では「生」が特別な意味をもって我々に捉えられる。
思うに作者は「生」の意味を強く問いたいがために、これほどまでに多くの「死」を見せつけたのではないか。
そのような視点で本作をみてみると、ただの怪奇ものではない何かがみえてくる。
人だけが自然のライフサイクルから外れているという「異常さ」に対する鋭い問いかけ。
人もそして人の「死」もまたごくありふれた自然の中の1つの出来事なのではないかという達観。
作者の死生観はどこか仏教のそれを感じさせる。
(仏教の死生観に関しては『ブッタとシッタカブッタ』が最も解りやすく説明している)
- 作者: 小泉吉宏
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どこか『ダレン・シャン』を彷彿とさせる作品ではあるが、あちらがほとんど純粋な冒険ファンタジーであるのに対して、こちらは読者に深く切り込んでくる問題提起型の作品。
惜しむべきは「絵」であることからどうしても生理的に受け付けない読者が出てしまうということか。
一晩中「生きること」の意味をぼんやりと考えたい人にはお勧め。
■読了日
2011/05/03