突撃あるのみ!

毎日新聞岸井成格 主筆(就任おめでとうございます!)の
早稲田大学における最終講義が行われた。


岸井先生、お疲れ様でした。
大変な重責を担われることになられましたが、
お体に気をつけて頑張ってください。<講義メモ>

■Summary
今年は、卯年。
卯は「扉を開く」の象形文字


また、昨年は寅年。
寅から卯への移行は「大転換」の年。


さらに、今年は60年に1度の辛の兎。
かつてこの国は、

  1. 明治維新(開国)−120年前(第1回帝国議会開催)  「第1の奇跡」
  2. 戦後復興   − 60年前(朝鮮戦争→朝鮮特需) 「第2の奇跡」

と過去2度の奇跡により、未曾有の危機を乗り切ってきた。
今年は現在の未曾有の危機を乗り越える「第3の奇跡」の年となれるか。


現在、政治・経済ともにこの国は「地殻変動」と言っても過言ではない状態に置かれている。
この状況は、
自民党一党支配体制が崩れた今から20年前に始まり、
これから10年ほど続く。


これは、120年前の明治維新の時期に匹敵する激動の時代である。
ということは、この国は再び「坂の上の雲」を目指すことが出来る状態にあり、
そして何よりも

誰もが「坂本龍馬」になりうる

面白い時代でもある。


そこで、「我こそは」という者に求められることは何か。

  1. 自ら「本物」に会いに行くこと
  2. 「本当のことを知りたい」と、アンテナを張り巡らせること

この2つである。
例えば「坂本龍馬」は、

  1. 勝海舟という「本物」に会いに(暗殺しに、だが)行き、そこで、
  2. 当時の世界情勢を諭されて「本当のことを知りたい」と開国へ転向した


本物に会うためにはどうすればよいか?
=突撃あるのみ
本当のことを追求するためにはどうすればよいか?
=常にアンテナを張り巡らせ、自分の直感を信じて行動せよ


■detail
●日本は「選択」を迫られている
背景:韓国が竹島の領有主張    → 竹島を実効支配
   (※以下の→以降はあくまで可能性の話で事実ではありません)
   ロシアの「戦勝記念日」制定 → 北方領土にロシア軍?
   中国が尖閣諸島領有主張   → 尖閣諸島に中国軍?
    ↓→「日清戦争」で「奪われた領土を取り返す」という認識
   ※その中には「沖縄(琉球)」も含まれる


このような東アジア情勢に対して日本はどう対処するか?

  1. あくまで話し合いの姿勢を貫く?
  2. おとなしく実効支配に屈して領土を譲り渡す?
  3. それとも・・・「力」で対抗する(つまり戦争やむを得ず)?

いずれにしてもいつか必ず選択を迫られる


民主党による政権交代への道のり
約20年前−竹下政権がリクルート事件で崩壊
     ↓→後継と目されていた面子が軒並みアウト
      ↓→宇野さん・海部さんといった前例破りの人が首相に
        →自民党一党支配の崩壊


小沢一郎さんによる「政治改革」
 目標:「二大政党制へ」
 手段:小選挙区制の導入


↑ジャーナリストは当初こぞって批判
 ↓→後にその必要性を理解し、支持に転換


⇔真っ向から反対した政治家・・・小泉純一郎さん
★小泉さんが掲げた小選挙区制の「弊害」

  1. 選挙の度に政治が「大きく揺れる」が、これは日本人の国民性に合わない
  2. 党営選挙となり、選挙資金と公認検を握る党首や幹事長の独裁となる
  3. マニフェストに縛られ自由を失う

↑この10年あまり後、「郵政選挙」にてまさにご自身がこの通りの手法を用いて、自民党を大勝させたのはあまりにも皮肉


結局、
2年がかりでようやく小選挙区制を導入、
そこから「政権交代」が行われるまでさらに18年。
20年かかった。
↑遅きに失したと言わざるをえない


●今政治に求められている喫緊の課題

  1. 開国(同時に大規模な「農業改革」などを行う必要あり)
  2. 国家財政の立て直し−日本財政が破綻すると世界恐慌になる
  3. 領土問題への対処法確立−尖閣諸島問題などはこれからますます先鋭化する

↑菅政権はこれに「真剣に」取り組むポーズを見せたので、国民は取り敢えず様子を見てみることにした

  1. TPP締結
  2. 消費税引き上げ
  3. 「外交の大方針」(毅然たる態度)

↑それが支持率約20%(政権の危険水域)から30%近く(30%になるとその政権はなかなか斃れない)まで盛り返した大きな理由
 ↑→ただし国民は半信半疑


●世界における日本
☆日本は完全に馬鹿にされている
−20年で16人の首相、更に頻繁に変わる大臣、が、日本の国際社会における存在感、信頼感を貶めた。
☆しかし同時に世界から注目をされてもいる
−この未曾有の苦境からどのように立ち直るか、これまで2回「奇跡」を起こしてきたように、「第3の奇跡」は起こりうるのか。
↓糸口は・・・

  1. 産業(エネルギー)革命−「脱石油エネルギー」
  2. 少子高齢社会突入

この2つが世界に大いに先駆けており、この行く末が大変注目されている。


ちなみに、岸井先生は御自ら、これの実践として、
森びとプロジェクト
に取り組まれている。
昨年は熊の住む森を守ろうと、ドングリをまく活動をなさったとのこと。


●「新聞社」に求められていること=岸井先生の取り組まれている課題
「紙の新聞は果たして生き残れるのか」
背景:Web、「電子書籍」の台頭と「新聞購読率」の現象
⇔ただ、最近は「こども新聞」が急速に読まれるようになっているとのこと
 ↑この現象の意味を分析することで、今「新聞」に求められていることが
  見えるのではないか


●ジャーナリズム

メディアの目的は、事実を正確に伝えること

↑しかし、事実には両面性があり、見方や立場によって異なる、という点が難しく、ジャーナリストとしてのジレンマでもある

どんな雑報でも必ず裏を取ることが、ジャーナリストとして死守すべきモラル

政治家は必ず「嘘」を付く
↓→その「嘘」を見抜く力こそがジャーナリストの力


■a wise remark

第3の転換は第3の建国の時

あらゆることが「オールジャパン」と言えるテーマとなってきた

情報をただ「右から左へ」流すことはジャーナリズムの精神に反する

私は自分の書いた記事で一度も「自主規制」をしたことはない


■a la carte
●エピソード1
岸井先生は、中学生の時、福沢諭吉についてお調べになる過程で、
小泉信三さんの存在を知り、なんと、直接会いに行かれた。
小泉信三さんは快くお会いくださり、お話をされた。
その後、岸井先生が生徒会長になられたとき、この感動を校内の生徒に味わってもらおうと、小泉信三さんを学校に招聘して講演してもらったという。
⇒やはり、「本物」に会おうと思ったら、「突撃あるのみ」


●エピソード2
「メディアに出るのはサービスだ。あなた方は試験で選抜された官僚や選挙で選ばれた政治家と違って誰にも『選ばれた』人ではない」
という旨でメディア批判を行った小沢一郎さんに、
「それは違うでしょう」
と噛みついたことがある。
⇒メディアにはメディアの良心があり、そのことに対する矜恃がある