だから私はテレビを見ないのだ
あなたが総理になって、いったい日本の何が変わるの (幻冬舎新書)
- 作者: 菅伸子
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2010/07/21
- メディア: 新書
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著者:菅伸子
■評価:良
情報:◎ 新規性:◎ 構成:△ 日本語:△ 実用性:×
難易度:易 費用対効果:○ タイトルと内容の一致:×
お勧め出来る人・用途 :菅直人の政治思想を知りたい人・菅直人の人となりから彼の政治思想を類推する
お勧めできない人・用途:菅直人に関するワイドショー的なスキャンダルを求めている人・菅直人に関する暴露話を仕入れる
■所感
テレビでの取り上げられ方と、内実とが全く異なる。
本書を読んで、ますます昨今のテレビがいかに「ワイドショー化」しているかを思い知らされた。
テレビで引用されていた箇所は確かに「とんがった」発言であり、それはそれでこの方の特徴を表していることには間違いはないのだが、それと本書の意義とは全く異なる。
何でもおもしろおかしくすることしか頭にないから、本当に良いものとそうでないものの区別がつかなくなるのである。
本書はその見た目と著者の「キャラ」に反して、有意義な書である。
本書の存在意義は2つ。
- 日本国の首相の私生活がどのようなものであるかが解る
- 菅直人の行動原理が解る
1. はスキャンダラスな意味で、ではない。
首相官邸がどのようなものであるか、首相の日常生活がどのようなものであるか、そして首相夫人に要求される事柄がどのようなものであるか、という情報はあるようで意外にない。
ほとんどの人にとってはなんら有益な情報ではないが、情報そのものの希少価値が高いと言える。
2. に関しても同様、希少価値が高い情報がいくつか得られる。
勿論、菅直人ほどの人間であれば、その「人となり」や「思想」、「経歴」についての情報はそれなりに調べられているだろう。
しかし、本書はそれらと比較しても十分に価値ある情報を包含していると言える。
最も近い人間が語っているから、ではない。
最も近くにいるのにも拘わらず「最も冷静にその様子を眺めている」人間が語っているから、である。
1. の情報が希少価値の高いものになっている理由も、同様、本書の著者の客観性が徹底されているから、である。
そうでなければただの「所感」に過ぎなくなり、それこそマスメディアが取り上げたような「暴露本」以上の価値は持ち得なかっただろう。
個人的な収穫としては、菅直人に対する偏向した見方を修正することが出来たことが挙げられる。
個人的な好悪もあるが「市民運動家」出身と聞くと、どうしても「左翼イデオロギー」がちがちの人間を思い浮かべてしまいがちである。
しかし本書に描かれている菅直人の行動原理から察するに、彼は自分が想像していたよりは遙かにそういうイデオロギー的な色彩が弱い、現実主義者であるように感じた。
以上のように、本書はマスメディアでの取り上げられ方とは異なり、それなりに価値のある情報を提供している。
ただし、「政治」に関する部分は読むに値しない。
それこそまさに著者の「所感」の域を出ていないからである。
この点に関しては、そこいらの飲み屋談義と大して差異はない。
■読了日
2010/08/04