大物の影に内助の功あり

ほんまにオレはアホやろか

ほんまにオレはアホやろか

書名:ほんまにオレはアホやろか
著者:水木しげる


■評価:良
  情報:○ 新規性:○ 構成:△ 日本語:○ 実用性:○
  難易度:易 費用対効果:○ タイトルと内容の一致:△
  お勧め出来る人・用途 :仕事や生活が大変だと思っている人・水木しげるの波瀾万丈な半生から自己の生き方について反省する
  お勧めできない人・用途:かっちりとした性格の人


■所感
 奥様に出会われる前の半生を中心に描かれた水木サンの自伝的エッセイ。
 この方が生きてきた時代、生き様に比べれば、我々の日々の労苦など比較にならないほど小さい。
 思わず「自分は一生懸命生きているか」反省させられる。


 しかしこの方の素晴らしいところは、そのような自身の血の滲むような努力に対して少しも自慢に思っていないことである(自信と自慢とは全く異なる)。
 さらりとかかれているが、実際にはいつおかしくなっても不思議ではないほどぎりぎりの人生を歩まれている。
 このような人物を真の「大物」というのだろう。


 さて。
 『ゲゲゲの女房』を読んだ身としては、奥様の描かれていた理想の「水木サン」が、いつ出来上がったのか、という点をどうしても考えざるを得ない。
 あの奥様をして

これだけ一生懸命に打ち込んでいる人の努力が報われないはずがない

 と思わせただけのオーラはいつ形成されたのか...。


 それが、どこを探しても見あたらないのである。
 「マンガにかける執念」のようなものがどこかに記述されているはずだ、と思ってページをひっくり返しても、どこにも見あたらない。
 恐らく当の本人は「生きること」に一生懸命だったのだろう。
 それが、周りの者にとっては信じられないほどの仕事に対する熱意、ある種近寄りがたいオーラのようなものと感じられていたのかもしれない。
 伝説など、そういうものである。


 だが、人の数だけ真実があって良いではないか。
 奥様にとって「水木サン」はやっぱり「己の信じた道一筋」の尊敬すべきお方だったのだ。


 それにしても。
 奥様、大変だっただろうなぁ。
 水木サン、少しもフォロー入っていません。
 それじゃぁ奥様が可哀想です。
 改めて奥様への尊敬の念を強めた一冊。


■読了日
2010/07/11