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モードとエロスと資本 (集英社新書)

モードとエロスと資本 (集英社新書)

書名:モードとエロスと資本 (集英社新書)
著者:中野香織


■評価:優
  情報:◎ 新規性:◎ 構成:△ 日本語:△ 実用性:○
  難易度:やや難 費用対効果:◎ タイトルと内容の一致:○
  お勧め出来る人・用途 :近年のモードの行方について関心がある人・近年のモードと資本主義との関係について考察する
  お勧めできない人・用途:最近のファッションについて関心がある人・最近のファッションの動向について知る


■所感
 欲望と資本主義との関係について考察された良書。
 見田先生の『現代社会の理論』にもあるように、資本主義がマルクスの予想を裏切って発展し続けたことには「モード」が深く関係しているのだが、本書でも「モード」は重要な用語として分析の対象となっている。

現代社会の理論―情報化・消費化社会の現在と未来 (岩波新書)

現代社会の理論―情報化・消費化社会の現在と未来 (岩波新書)


 本書の特長はなんといっても近年の「モード」についての鋭い分析であろう。
 「エコ」などの「倫理」に走る「モード」、「女になりたがる男性」の「モード」、「婚活」に適した「モード」、など。
 近年の「モード」の動向について、過去の歴史との対比からそれぞれが何を意味しているのかを鋭く指摘している点は高く評価できる。


 他にも「パワードレッシング」という概念の解説などこの分野(ファッションとモード)に関する知識があまりない人にとって、本書は非常に勉強になる。
 大衆をターゲットとするマーケティングに携わる人間にとって必読の書であることは間違いない。

 
 惜しむらくは、解りづらい構成か。
 それが本書の難度を僅かながらとはいえ、上げてしまっているのは新書としては少し残念である。
 (まあ、タイトルで「売れる」だろうからマーケティング的には問題ないのかも知れないが。せっかくの良書も広く読まれ、理解されなければもったいない、というのが良心的なBiblioの心情である)


ちなみに欲望と資本主義の関係について考察された良書には以下の書籍がある。

「欲望」と資本主義-終りなき拡張の論理 (講談社現代新書)

「欲望」と資本主義-終りなき拡張の論理 (講談社現代新書)

そのままのタイトルだが、新書にしては珍しく、タイトルに沿った内容の書なので十分目的を果たすことができるだろう。


■読了日
2010/06/16