恋なきところに愛あり
- 作者: 武良布枝
- 出版社/メーカー: 実業之日本社
- 発売日: 2008/03/07
- メディア: 単行本
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著者:武良布枝
■評価:良
物語:○ 情報:ー 斬新さ:△ 意外性:◎ 含意の深さ:△ ムーブメント:◎ 構成:△ 日本語:○
難易度:易 費用対効果:○ タイトル:○
お勧め出来る人 :「家族」の存在意義、「結婚」の意味について考えてみたい人
お勧めできない人:「内助の功」といった古い価値観に嫌悪感を感じる人
■所感
本書は夫婦愛の物語であるが、いわゆる「恋愛」ものではない。
正確に言えば、「愛」はあるが「恋」はない。
(本当にそうであったかは本人達しかあずかり知らぬところであるが)
しかし、そこには確かな「ぬくもり」が感じられる。
テレビドラマの序盤を見るかぎり、これは最近の「婚活」を意識した物語なのか、と思ったが、そうでもない。
「見合い結婚」なので、復古主義なのだろうかとも勘ぐったが、それもはずれ。
純粋な「家族愛」の物語だった。
かつてはさんざんに非難された「恋なき結婚」であるが、こうしてみてみると、「生活を共にする」という長い目で見ると「見合い婚」もそれなりに有効な制度だったのではないかと思われてくる。
勿論、
- (双方に)選択権が残されていること
- (双方に)離婚をする権利が保証されていること
が前提とはなるが、結局は相性の問題だから、「盲目」でかつ「熱した分だけ」幻滅も大きい「恋」などない方がベストパートナーと一緒になれる確率が高いのかも知れない。
この夫婦の場合は、奥さんの方の「運命への態度」が結果的に幸福をもたらしたのだと言える。
現実を受け入れ、ひたすら良人を信じ、赤貧に耐えて......と書くと何か受動的でただただ堪え忍ばされている可哀想な人のように見えるかも知れないが、本書で当人が語る物語からはほとんどと言って良いほど悲壮感を感じない。
あっけらかんとしているのである。
勿論、相当な苦労もし、苦しい思いもしたと率直に述べているが、それも含めて、己の運命として受け入れ、積極的に生きたことが、豊かな人生に繋がったのだといえる。
本書は「自分の人生は幸せだった」と言える人生があるのだ、ということを教えてくれる良書である。
こういう家族に憧れるなぁ。
■読了日
2010/06/06