それが自己満足であることの自覚はあるか

カッコウの卵は誰のもの

カッコウの卵は誰のもの

書名:カッコウの卵は誰のもの
著者:東野圭吾


■評価:可
  物語:△ 情報:ー 斬新さ:○ 意外性:○ 含意の深さ:○ ムーブメント:△ 構成:△ 日本語:○
  難易度:易 費用対効果:○ タイトル:△
  お勧め出来る人 :努力と才能と人間の幸福について考えたい人
  お勧めできない人:本格ミステリーを求めている人


■所感
 東野さんが何かメッセージ性のある作品を書いた時の出来映えは両極端に分かれる。
 駄作か良作か、である。
 その中間のような作品は見かけたことはない(少なくとも20冊近く読んだ限りでは)。


 前者の典型は『時生』である。

時生 (講談社文庫)

時生 (講談社文庫)

 意欲作であるのは間違いないのだが、親子の会話にあまりにもリアリティがなくてしらけてしまう。
 肝心の物語そのものも×。


 後者は人によって好き嫌いがあることを承知で敢えて挙げるならば、『虹を操る少年』となる。

虹を操る少年 (講談社文庫)

虹を操る少年 (講談社文庫)

 両者とも完全なSFであるが、こちらの方は完成度が高く、また物語としても洗練されている。
 個人的には東野さんの作品の中で1,2を争う良作だと思っている。
 勿論、スタンダードなミステリーも含めての個人的な順位付けである。


 話を元に戻す。
 本作は残念ながら、提起しようとしている問題はよく伝わってくるのだが、物語としての出来は×。
 ミステリーとしても不合格である(これはおそらく多くの読者の賛同をえられるものと確信している)。
 他に特筆すべき特長もないことから、上述のような評価になった。


 また過去の作品で恐縮だが、東野さんでスキーもの、と言えば、『鳥人計画』があり、 

鳥人計画 (角川文庫)

鳥人計画 (角川文庫)

作品の目的が異なることは頭では解っていながら、どうしても比較をしてしまうのだが、そうした場合、軍配は明らかに『鳥人計画』の方に上がる。


 テーマは「努力と才能」「スポーツ選手の悲哀」そしてやはり「家族」なのだが、ちょっとこの作品に関しては失敗の感が否めない。


 東野さん、相変わらずムラがあるから注意しないといけないな。


■読了日
2010/06/01