断る力 (文春新書)

断る力 (文春新書)

書名:断る力 (文春新書)
著者: 勝間 和代


■評価:良
  情報:△ 新規性:△ 構成:△ 日本語:× 実用性:○
  難易度:易 費用対効果:○ タイトルと内容の一致:○
  お勧め出来る人・用途 :頼まれると断れない人・「断ること」の必要性と効用を理解する
  お勧めできない人・用途:相手との関係を壊さないで「断りたい」と思っている人・上手な「断り」方を調べる


■所感
  勝間さんの著作の中で、万人にお勧めできる2冊の本のうちの1冊(もう1冊は『お金は銀行に預けるな』)。

お金は銀行に預けるな   金融リテラシーの基本と実践 (光文社新書)

お金は銀行に預けるな 金融リテラシーの基本と実践 (光文社新書)

  

  本書は「断る」ことのメリット・デメリット、「断らない」ことのメリット・デメリットをそれぞれ客観的に洗い出した上で、なぜ「断る」ことが必要なのかを明快な論理(勝間さんの本領発揮)で説明した良書である。
  「断らないこと」の最大のメリットは物事を深く考えないですむこと、という指摘は非常に鋭い。
  このようにとかく感情論や(「場」の「空気」といった)曖昧な言葉で適当に思考停止してしまうようなところを掘り起こして徹底的に理詰めで考え、行動してしまうところが勝間さんのすごいところである。


  本書で指摘されているように、「断らない」生き方を続けていると、間違いなく「コモディティ」化の罠にはまりこんでしまい、「代替可能な」ものとして、自らの運命を会社をはじめとする自分の外部に委ねてしまうことになりる。そうなってしまうまえに、自分にとって伸びる見込みのないもの、自分にとって必要のないもの、自分にとってあまりにも効用が低すぎるものは積極的に「断わ」り、限りある貴重な「時間」という資源を最大限、自分の得意分野につぎ込むことで「スペシャリティ」としての地位を保ち続ける必要がある。


  時にこの行き過ぎるまでの合理性を全面に打ち出してくる態度が、敬遠されてしまう大きな一因となっているtという点は、本人にとって大きな損失だと思わなくもないが、本人は意図してそのような「リスク」をとっているようなので、そこは"It's not my business."ということで余計なお節介はしない。



  「断る」に限らず、時間という資源は限られていること、その限られた資源を計画的に効率的に活用していかなければ(少なくても仕事上は)生きていけないこと、「苦手を克服する」発想から「得意分野を徹底的に伸ばす」発想への転換など、誰もが頭に入れておきたい原則が理路整然と述べられている良書。



■読了日
  おそらく09年10月頃