40歳からの肉体改造―頑張らないトレーニング (ちくま新書)

40歳からの肉体改造―頑張らないトレーニング (ちくま新書)

書名:40歳からの肉体改造―頑張らないトレーニン
著者:有吉 与志恵


良書。
主題を読む限り、相当過酷な「肉体改造」の提案をするのかと思ったが、副題の通り、「無理をしない」トレーニングのすすめ、の本だった。
だが、これは単に「お手軽」ということを意図している訳ではない。
きちんとした解剖学的な根拠がある。
曰く、「普段使用していない部位を無理に伸ばそうとしても、その部位を意識することで筋肉の緊張を招き、返ってその部位を固くしてしまう」などなど。
普段運動をしていない(ことで体に問題を抱えた)人が突然ハードな筋力トレーニングを行っても百害あって一利なしでしょ、という本書の指摘は冷静で正しい。


それよりもまず、普段の偏った体の使い方を修正することから始めましょうというのが本書の主張で、その肝は、姿勢の矯正、特に体を支える背骨(とそれを支える筋肉)の修正と、過緊張となっている箇所の柔軟である。
これもまた的を射た正しい指摘である。


本書は、前半半分をかけて、しっかりと理論を説明し、納得してもらったあとで、後半はそれを実践するための具体的な「コンディショニング」方法を図を交えながら丁寧に説明している。
ここでも強調しているのは「無理をしない」「目的は不快を快にすること」「結果を必要以上に追求しない」といったことであり、実際に紹介されているストレッチも、全てほんの1分程度で苦痛なく出来るものである。
だが、それにも拘わらず、これらの「コンディショニング」にはきちんと効果がある(と私の直感は訴えている。まだ実践して実証していない)。


本書で紹介している通りに「コンディショニング」を始めてみることが最も望ましいが、そのつもりのない人も一度本書を読んで、自分の体の状態と、その改善案について考えてみると良い。
意外な発見と、問題の解消法のヒントが得られるだろう。


あとは、本書の最後で著者が述べているとおり、「どれだけ自分の体を大切にしてあげられるか」の問題。
・・・こればっかりは、私にはどうにもならんな、と。
せっかくの良書も私には豚に真珠となりそうだ。