書名:メガヒットの「からくり」―実例で読み解く発想法とテクニック
著者:安部 徹也


駄本。
タイトルや帯の文句で期待されるような新奇性はまったく含まれていない。
マーケティングの教科書に書かれているようなことを簡略化し、それっぽい事例をいくつか挙げて色づけしただけの薄っぺらい本。


本書は、いわゆる「お手軽本」の類で、かつ、説明が親切ではない。
マーケティングの基本ぐらいは勉強したことがある人ならば、すらすらと読めるが、その類の知識のない人が読むとおそらく字面が目の前を流れていくだけで終わってしまうだろう。
それでなんとなく解った気になったとしても、では実際に行動してみようとした時に、本書で得た知識はほとんどといって役には立たないだろう。
「セグメント」や「差別化」といったきちんとした理解が必要な用語がしっかりとした説明もなく乱発されていることがその大きな要因の1つ。
「解ったつもり」というのは一番恐ろしい状態なのだが、本書は見事にその「解ったつもり」を作り出す原因となっている。


また、「キャズム」という専門用語を使用しているが、用語の出所を明らかにしていない。
(まさか知らなかったということはあるまい)
コンサルの業界用語という説明しかないが、出典は記述しておくべきだろう。
この辺りをサボるから「お手軽本」のレッテルを貼られてしまうのである。
確かに、大半の人にとって原典まで読む必要はない。
だが、本書が「入門書」的な地位を目指すのであれば、そこはしっかりと辿れるようにしておかなければこの先の発展はない。
(驚くべきことに参考文献の一覧すらない)


で、騙されて最後まで読んでしまった方も悪い。
いや、著者紹介の経歴にすっかり騙されてしまったのだ。
70〜80頁読んだ段階で本当は放棄したくなったのだが(あまりにも当たり前過ぎてつまらなかったので)、著者のプロフィールから「この本には何か発見があるに違いない」と思い込んでしまったのが間違いの元。
コンサルにもいろいろな人がいるのね。


敢えて時間を割いてまで読む必要のない本。
マーケティングの勉強をしたいのであれば、少し気合いを入れて評判の確定した本(それこそ『キャズム』であるとかMBAのテキストであるとか)を読んだ方がかえって早い。