東京レポート4-2

さて。
最も危険な日がやってきた。
この日の予定は夜にお1人の方とお会いする約束だけ。
今回の過密スケジュールの中で、唯一(正確には翌日の日中もそうだったのだが、この日の行動で「唯一」になってしまった。東京レポート4-3も参照)、まとまった時間がとれる日である。
そんな日は何をするか。
勿論、書店に行くのである。


さて、もともと私は○伊国屋派だったが(単に新宿が一番良く行く街だったから、というのと、池袋があまり好きな街ではなかったから、という理由なのかも知れないが)、東京を離れて、客として東京を訪れるようになると、○ュンク堂の良さを痛感するようになっていった。
まずは、かご。
これはビブリオにとって必需品。
まあ、敢えてないことで手にあまる量の本を買ってしまうという危険性から身を守ることができるとも考えられるのだが。<そしたら単に頻繁にレジに向かうだけでしょ、あんたの場合>
次に、いす。
私は立ち読み(椅子を利用すると座り読みか)をしないので、基本的には利用することがないが、重い荷物を持って何時間も(この日は5時間弱)うろちょろしているとさすがに疲労困憊するので(いや、休めよ。ていうか荷物減らせよ)、椅子があるというだけでだいぶ気持ちが違う。
そして、棚。
○伊国屋の棚も嫌いではないが、平積みのために書のバリエーションが犠牲になっている感がある。
その点○ュンク堂は、まるで図書館のように本を棚に収めている。
○ュンク堂は○伊国屋ほどには専門書を取り扱っていないイメージだったが、実際にはこの棚のおかげで豊富な数の専門書が扱えるようになっている。
極めつけは会計。
私のように興味関心が散漫なビブリオにとって、フロアごとの会計は非常に相性が悪い。
支払い手続きを何度もしなければならないし、配送の手続きも面倒。
欲しい本を好きなだけかき集めて最後にお会計(たいてい金額見て真っ青になるのだが)、発送など諸手続というシステムは、私にとって非常に有り難いシステムなのである。
など諸々の理由で、あっさりと○伊国屋を裏切って前々回から○ュンク堂に鞍替えをしているのであった。<といいつつ、ちゃっかりと○伊国屋も毎回チェックしているんだよね、この人は>


今回は、上京の前に、前回お会いした方から、「新宿に新しい書店が出来た」との非常に有り難い(ありがとうございます)情報を得ていたので、まずはそこに向かうことにした。
「まずは」というのは、大変大変失礼ながら、あまり期待していなかったからである。

新しい書店=ベストセラーの集積所
ブック○ァースト=shallowなイメージ
地下2階分=売り場面積が狭い=ベストセラーしか置いていない

以上のような偏見を抱いていた。
これは最初に○ュンク堂に対して持っていたのよりももっとひどい偏見で、どちらかというと語の響き的に某ちり紙交換の店と勘違いしていた(古書店かと思った。最初に聞いたときには)くらいである。
↑ひどい人だね、この人は。
(たぶんブック○ーケットかなにかと勘違いしていたんだよ、きっと)


という間違った感覚で、まず向かったのは、新宿南口。
・・・何で?
(教えてもらったのは新宿西口)
い、いや、所用が。


まずは、携帯のバッテリー交換。
購入から5年も経って、さすがにバッテリーが持たなくなってきた。
まともに使っていると(しかも通話じゃなくてメールだけで)1日でバッテリー切れになる。
さすがに使いづらくなっていたので、バッテリーくらいは換えようと。
そんなものはわざわざ東京でやるなって?
だって、○illcomショップはこの県には1つしかないのだよ。
しかも自転車では行けないようなところ。


で、実は新宿南口の某デパート内の電気屋で契約していたので、そこまで出向いた。
が、

こちらは代理店なのでお取り扱いできません

とあっさりショップに行くように支持された。
地図を見せてもらうと・・・西口。
しかも行こうと思っていた書店の隣のビル。
これは、何かの掲示かも知れない(機種を変えよ、とかいろいろ)とむしろ期待感が膨らんだので、素直に支持に従うことに。


同じデパートの某何でも屋(強いていうなら高級ホームセンターといったところ)で、愛用の(愛用の?単に使い続けているだけじゃん)シャンプーを・・・手に入れようと思ったが売り切れていた。
うーん。
いよいよネット通販(古い。オンラインショッピングと言え)を考えなければならないようです(ストックは1つしかないのでさすがに1年は持たない)。


普段ならこのまま○伊国屋に流れるのだが、ここは踏みとどまって西口へ。
何せここで力(文字通りの力と、勿論お金の力)を使い果たしてしまうと、せっかく紹介された書店で何も出来なくなってしまうからだ。


西口のまずは○illcomショップを訪問する。
実はこのとき(恐らく空腹で。13時を過ぎていた)気分が悪くなりかけていたのだが、まあ、長くはかからないだろう、少し話を聞かせてもらうだけだと、そのまま突入。
席に案内されて、ちょっとやばいと感じた。
あ、やばい。
慌てて店員さんが捜し物をしに行った隙に薬を服用する。<気分悪いなら気分悪いと言って中座しろよ>
どうにか平静を繕って<繕うなよ>、話を聞いてみると、やはりバッテリーの交換よりも機種変更をした方がよいとのこと。
最初は乗り気で、本当に即日契約をして変えるつもりだったのだが、気分の悪さ(早く帰りたい)のせいか、或いは、「この不安定な時期に2年契約・24ヶ月分割払いはやばい」と感じたのか、はたまた「なんでこの機種には黒がないのだ」という点が気に入らなかったのか、「え、PCでアドレス管理出来ないの」という点に変にこだわったせいか、「何で私はストレートタイプにこだわらないといけないのだろうか」と思ってしまったせいか、気分の悪い中1時間も粘って、結局何もせずに「ちょっと考えさせてください」と言って出てきてしまった。
相手をしてくださった方が新人さんだっただけに、非常に悪いことをしたなぁと(貴方には何の非もないですよ。ただ、私の体が言うことを聞かなかっただけ)。
これは結局正しい選択だったのかも知れない。
何せ、その最新機種を2本買えるくらいの額をその後書籍につぎ込むことになったのだから。


さて、恐らくこの腹部不快感は空腹のせいだろう(空腹を空腹だと感じなくなって久しい)と検討をつけ、せっかく、新宿のセンタービルにきたのだから、一流ビジネスパーソンになったつもりで食堂にでも入ろう、と思って食堂街をうろうろしてみた。
が、結局コンビニでおにぎり買って、外で寂しくそいつを胃に放り込むことになった。
どうもどれも食べられそうになかったのである。
まあ、東京らしいと言えば、らしいが。
こんなことの積み重ねで、私はきっと旅が嫌いになっていくのだろう。


さてさて、お待ちかね、書店巡り。
先にも述べたように、私は大いなる勘違いから、教えていただいた書店にあまり期待をせずに来店することになった。
まあ、ちょっと様子見て駄目だと判断した時点で池袋に切り替えようと、そうおもっていたのだが・・・。
出られなくなった
勿論、閉じこめられたという訳ではない。
自分で籠もったのだ。


最初に入ったフロアは政治・経済など社会学系のフロアだった。
当然ビジネス書だらけだろうと思いきや、意外にも政治・経済の書籍も充実している。
さすがに新しい本が中心だったが、危惧していた「ベストセラー平積みだらけ」状態ではない。
本の並び方も結構しっかりしている。
easyな本に紛れて、古典的な著作もきちんと配置してある。
なんだ、本格的じゃないか。


最初は本当に見るだけで済まそうと思っていたが<あんたが書店に入って手ぶらで出てきたことがあったか?>、興味のある本が4冊、5冊と重なって行くにつれて、これは1つ今回の書漁りをこの店でしてみても良いかも、という気分になってきた。
で、まずはカゴを取り・・・。
後は略しても何が起こったかは容易に想像が付くだろう。
本の1週間前に新刊本は一通りチェックして(勿論ストップがかかるわけがないので大量に購入して)いたのである。
まさかそんなには買うまい、まあ、送料を考えると1万円を下回ると損だな<あんたが本格的な書店を訪問して5桁のお金を払わなかったことがあったか?>という考え方は甘すぎた。<いい加減、学習しようぜ>
たちまち20冊近くの本がカゴに放り込まれ、私はそのフロアだけで1ヶ月分の書籍代予算を使い果たした。
(既にこの前の週にその月の書籍代予算はオーバーしているので、これは痛みの上塗りでしかなかったが)
最初に訪問したのが社会学系で良かった。
社会学系はもともと専門分野だから書の見極めはかなり高い精度で出来る上、まだ取り組めていない古典も多いから、「今は買っても読めない」本の見極めも確かだ。
更に、一番購入してしまう危険性の高いビジネス書に関しては、昨年嫌と言うほど購入して読みあさっているので、最近は熱が冷めている。
それで、この有様である。
これが人文系だったら、あるいは新書・文庫フロアだったらどうなっていたか?
考えるだけで恐ろしい。


社会学系のフロアを後にして、次に向かったのは人文系。
もう既に相当な本を買ってしまっているから、このフロアで大量の本を衝動買いすることはないだろう・・・。
幸いにもひいきの学者の新刊はほとんど出ていなかったので、このフロアでの大散財は避けられた。
東浩紀の本を手に取り、「いや、これは古書でも買えるはずだ」と元に戻し、また手にとっては戻し、としていたとは口が裂けても言えない。
(もう言っているし)
永井均の本を見かけなかった(無意識のうちに見ないように逃げていただけかも知れないが)という点も大きかっただろう(たぶん即買いしてしまっていたのだろうから)。
村上陽一郎のラインナップも今ひとつピンと来なかった。
ちょっと、人文系のフロアは力不足かな、という気がした。
(勿論、○伊国屋や○ュンク堂と比較して、ということである。一般の書店からすればよだれが出るほど羨ましいラインナップになっている)
私が必ずチェックしている宗教・神話・心理学に関しても今ひとつだった。
特にグノーシスの扱いは気に入らなかった(中世思想と神秘思想に分断されていた)。
心理学の方も今ひとつ。
ラカンの入門書があれば買っていただろうが、フロイトラカンの辺りは薄い感じだった。
まあ、手に取って気に入った研究書が1冊で新書10冊分もする高いものだったから買わずに済んだ(本当はそんな本も値段など気にせずにがんがんカゴに放り込めるようになりたい)というのもあるのだろうが。
ポストモダンの辺りも敢えて見逃した。
危険な予感がしたからだ、勿論散在の。


と言うわけで、なんか今ひとつだなと人文系を後にし(この時点で既に2時間以上経過)、理工系に向かった。
純粋文系で数字嫌いの私が理工系に向かって何するかと言えば、勿論本業のプログラミング関係の書籍探しである。
こちらに関しては、(特に○ュンク堂の充実ぶりと比較すると)やや見劣りがする感じだった。
だが、プログラマに定評のあるO'Raillyの本を、書棚2つ分を使って、洋書まで揃えてみせるなど、押さえるべきポイントはしっかりと押さえているようだった。
実はRailsの本を探していたのだが、そっちは見つからず(これが後日○ュンク堂散在編へと繋がる悲劇の発端)。
プロジェクト工程管理の本も探したが、こちらもヒットせず。
他の理工系分野にはちょっと手が出せない(誰か代わりにリサーチしてくださいっておい、これ新書店レポートなのか?)のでそのままスルー。
やや不本意ながらも、何故かしっかりと5桁の買い物をしてレジに持ち込んでいた。
ここでもまた宅配の手続き。


どうも、同一日ならフロア間合計で送料を無料にしてくれるらしい。
ということを学習した私のその足は、再び人文フロアへ。
気になっていた本数冊を手にとってレジに直行。
これで人文フロアも制覇(??)


この時点で外は既に真っ暗になっていた。
なんだ、もう他の書店に行く時間はないぞ。
まあ、そうでなくても既にこの時点で最初に持っていた偏見は取り払われ、どうしても地下1階を見ずには帰れない状態になっていたのだが。


社会学系フロアに戻って、プレゼント用の書籍(東京レポート4-5参照)をこの書店で購入することにした。
そういえば言い忘れていたが、この書店の利点として、書籍検索システムの使いやすさがあげられる。
○伊国屋は、UIがダメダメだし、○ュンク堂の検索システムは台数が少なくてなかなかアプローチできない。
この書店の検索システムはその点で優れていた。


それにしても。
私のような興味関心がちりに散っている人間にとって、このフロアごと会計は少々面倒だ(これは○伊国屋の会計システムとどっこいどっこい)。
後で教えてもらった話だと、店員さん付き(!)でフロア間を未決済書籍を抱えたまま移動できるらしいが、これは非常に面倒でかつあまりやりたくはない。
まあ、あんたみたいなタイプが珍しいんだろうけどさ。
フロアのセグメント分けは結構しっかりとしていたので、多くの人にとっては帰って通いやすい書店なのだろう。
目的の本も見つけやすいはず。
私のように1日で6つもレシートを出してもらうようなことには基本的にならないだろうし。


地下1階。
恐怖の文庫・新書エリア。
ここを如何にしてくぐり抜けるかが誘惑との戦いの鍵を握る。<はい、はい>


今回は・・・。
実を言うと、地下1階に上がった時点でほとんど時間切れだった。
夜に人にお会いする約束があったが、余りにもへとへとでかつ胃腸も何かぶーぶー言い出していたので、少なくとも30分は休息を取る必要があった。
この辺りでまともに休息がとれるのは新南口のあの場所しかない。
そこで30分で良いから休息を取るには・・・と考えるとほとんど時間は残されていなかった。


目的だけを果たして撤収することにした。
目的とは、もう1人の方のプレゼント用書籍を手に入れることである。
この時点で私は、その本が確実に手に入るものだと信じて疑わなかった。
が、検索の結果は「在庫なし」。
あらあら。
(結局その本は翌日○ュンク堂で手に入れることになる。東京レポート4-3参照)


で、目的は果たしたんだから帰ろうね。
・・・その手に持っているのは何かな?
というわけで<だからどういう訳なんだ?>、この人が文学をスルーできるはずもなく、新刊のディスプレイを何事もなく見過ごすこともできるはずがなく、更には新書コーナーをスルーできるはずもなく(文庫はさすがに時間切れでスルーしてしまった。心残り。新書もしっかりとは見られていない)、手にはしっかりと10冊ばかりの書籍を・・・あれ?確かカゴは使わなかったはずだけど、どうやって持っていたのだ??
またまた5桁のお勘定で、ついに2ヶ月分の書籍予算を通り越して3ヶ月目に突入してしまったのでした。
新しい書店、侮れませんね。<いや、あんたの意志が弱すぎるだけだろうに>


後ろ髪引かれる思いで書店を出ると、外は涼しい夜の風景。
1日中図書館に籠もって勉強、ならまだかっこいいかも知れないけど、この人は1日中書店に籠もって本漁り、ですからね。
またもや空腹か何か知らないけれども気分が悪い・・・。
予定通り休憩場所へ直行・・・あれれ、そっちは方角違いまっせ。


向かった先は・・・。
本屋
をい
ダレカコノヒトヲトメテクダサイ


いや、一応そのプレゼント用の書籍だけ確認しに、ね。
とつよーくつよーく言い聞かせて、○伊国屋新宿南店に入る。
さすがに散在しすぎて青ざめていたのか、単に気分が悪かったのかは知らないが、ここでは余計なことをせずに(それでもちらちら本はチェックしながら名残惜しそうに)、目的だけ果たして出てきた。
肝心の本は、見つからなかった。


改札前の通い慣れたレストランで一服(たばこは飲みませんが)・・・と思ったが、メニュー見てやめにした。
さすがアメリカンレストラン。
今の私が食べられるものがなーんにもありましぇん。
仕方がないので付属の喫茶店の方に移動。
適当にパンとエスプレッソ(またカフェイン!!)を放り込んでしばし読書休憩。
(読書は休憩ではありません)<体は休めているのだから休憩じゃ>


時間になったので、重いからだ以上に重たすぎる荷物を抱えて電車に乗る。
向かったのは東京駅。
今日お会いする方の職場近く(というより、職場そのものの出入り口)での待ち合わせである。


20:30のお約束だったが、22:00になっても、その方は仕事を抜け出せなかった。
まあ、私も22:30退社だからな、普段は。
私の場合は単に能力がないので帰れないだけだが、その方は求められているものが高いので、とても忙しいのである。
よくもまあ、私のためにお時間をお取りいただいてくれて。
(ちなみに翌日の大隈塾飲み会の幹事さんである)


結局は22:30くらいになってようやく(半ば投げ出してきてしまったらしいので、非常に悪いことをした。翌日も大変だったそう。本当に申し訳ない)、退社出来たそうなので、同ビルの飲み屋に移動。
終電があったのであまりじっくりとお話はできなかったが、近況など教えていただけて大変有意義な一時を過ごせた。
さすがですな。
「大学に戻る」「政治家になる」という夢はまだお持ちのようで(私はとうの昔に夢なぞ捨て去っているので、夢を持ち続けてがんばっていらっしゃる人を尊敬する)、がんばっているお姿を拝見できて大変励みになった。
彼の役に立てる人間になりたいと心から思った。
今の私では足手まとい以外の何ものでもないが。


もう少しゆっくりとお話を伺いたかったところであったが、終電が迫ってしまったので非常に名残惜しいことながら失礼させていただくことにした。
(翌日飲み会の席でまたお話しできるだろうと安易な気持ちでお別れしてしまった。結局翌日はお話しする機会がなかったので非常に惜しいことをした。尤も、彼も翌日はお仕事だったので我が儘を言うわけにはいかなかったが)
資本主義の最前線で企業戦士としてがんばっている同学の者を見ていると、励みになる。
彼らはもっと厳しい現実と戦っている。
彼らを見ていると、私の苦しみは、とてつもなく低いハードルに躓いて痛がっているくらいのちっぽけなものにしか見えない。
もっとがんばらなければな、という気にさせられる彼らとの会合は、私にとって努力の源泉となる貴重な出来事である。
願わくば、次もまた会っていただけるだけの魅力を備えた人間であれるよう、精進しようと決意を新たにした。