小倉昌男 経営学

小倉昌男 経営学

タイトル:小山昌男 経営学
著者:小山昌男


全体的に冗長。
特に前半。
繰り返しが多い。
後半には結構良いことを書いてあるのだが、そこに行き着くまではかなり退屈。
成功談というのはえてして役に立たないものだが、この人の成功談は大いに参考になる。
だが、さすがに2度3度と繰り返されると読むのも疲れてくる。
ただの自慢話にしか聞こえなくなってくるしね。
肝心の「行政との戦い」に関して裂かれている紙数が少ないのもマイナス点。
多くの読者(勿論私も含めて)は本書にこの点を期待していると思われるから、これはちょっといただけない。


内容に関しては、典型的な日本型経営の鏡のような経営哲学の理念と実践を綴った回顧録といったところ。
但し、「日本型経営」として現在では悪名高い「年功序列」や「護送船団方式」、「リスクを忌避する態度」に関しては、著者は否定的。
そういう意味では、以上の点において非難の対象となっている「日本型経営」の中でも、現代においても通用する良い日本型経営(という表現が不適切であれば、日本型経営の良い部分だけを取り出した良質な経営)理念・手法であるといえる。


そう、内容は悪くないのだ。
問題は冗長であること。
この内容なら50頁くらいで要約してくれればよい。
まあ、「人生最初で最後の」とご本人がおっしゃっているくらいだから、語りたいことはたくさんあったのかもしれない。


1点だけ、著者と意見を異にするのは企業の役割。
「企業の役割とは存在し続けること」「企業は雇用を維持するという社会的責任がある」という考え方は、典型的な日本型経営の考え方だが、私は同意しかねる。
理由は、「企業」というものは、そもそも「ある目的のために出資者を募り、人を集めて何らかの成果を出す」一時的な人・物・金の結集点だからである。
これは「株式会社」の起源である大航海時代までさかのぼって考えれば明白である。
(私はファンダメンタリストなのである)
勿論、当時と現代とでは社会環境が全く異なるが、そこは原理・原則の話。
企業が社員を大事にするのは、それが利益に繋がるからであり、社会貢献のためではない。
目先の利益のためだけにめちゃめちゃなリストラ(≠首切り)を行う行為は勿論論外であるが、企業の目的は利益を出すことであり、企業の義務は納税だけである(だから、利益を出さずに法人税を全く払っていない企業の方が非難されるべき)。


話が長くなってしまったが、企業経営者だけでなく、この国の社会人は一読してしかるべき基本の書。
会社とは、社長とは、社員とは、経営とは、そして行政とは何かを考える上で良い問題提起となる本である。