キャズム

キャズム

書名:キャズム
著者:ジェフリー・ムーア(川又政治:訳)


良書。
もの(特に「新しい」と言われているもの(例えばソフトウェア)づくりに携わる人、それを売る人、その経営者、必読の書。
新しい技術を駆使した、或いは新しい発想の元に作られた商品が、どのように市場に受け入れられていくか(或いは市場から葬り去られていくか)をダイナミックに描いたすばらしい本である。
MBAの必読書にも指定されているらしい。
当然のことのように思われる。


語られているのは、アーリーアダプター(ビジョナリー)とアーリーマジョリティーの間には、超えなければならない大きな溝、キャズムが開いており、それをどう乗り越えるかが、その製品の行方(ひいてはその製品を開発した企業・部署の運命)を決定する、という非常に単純で明快な論である。
しかし、これは精巧に作られたモデルであり、また面白いほど昨今のハイテク製品の浮沈を説明できている。


ただ闇雲に試行錯誤しているだけでは、いつまで経っても「売れるもの」を作り出すことはできないし、突き進むべきか撤退するべきかの判断もつかない。
経営判断には、何らかの枠組みが必要なのであるが、その枠組みは多くの事象を説明でき、尚かつシンプルなものの方が望ましい。
そういう意味では、この「キャズム」理論は、(特にハイテク産業の)経営判断を行う上で1つの有力な、説得力のある枠組みたり得るだろう。


ビジネスマン必読の書であることは間違いない。
出来れば技術者も(自分たちの作っているものを「売れる」商品にするための知識・理解として)読んでおきたい本である。