官僚国家の崩壊

官僚国家の崩壊

書名:官僚国家の崩壊
著者:中川秀直


読了はおそらく6/26(木)。


期待したほど面白くはなかった。
サンプロでこの人の話を聞いたときには、「何かとんでもないことを言う政治家がいるな」と好奇心をかき立てられたのだが。
ただ、述べられていることは基本的には正しい。
改革の方向性も間違っていない。
「ステルス複合体」なる言葉は、田原氏の感想に等しく、今ひとつの感じを拭えないものであったが。


中盤が全体的に退屈。
中だるみの感がある。
構成の問題かも知れない。
序盤で問題点の洗い出しを行ったのだから、読者としては早く著者の政策を知りたいと思う。
が、中盤は著者の個人的な話ばかりでなかなか政策の話が出てこない。
やっとそれらしき記述が見られたと思ったら、地方の個別具体的な成功例を挙げているだけだったりする。
あなたの思想や決意は解ったから、早く政策を聞かせてくれ、という気持ちで読んでいた。


ちなみに、この人の思想には少し危険な部分が含まれている。[8/26 追記]
↑と書いたところで途切れていた。
上記も読了からしばらく経ってから書いたもので、「確かこの辺が『危険な』部分だったんじゃないかな」と調べてみたものの、よく解らなくて中断したようだ。
ということは、それよりも遙かに日数が経ってしまっている現在は、この件に関しては保留にするべきであると思う(撤回はしない。なぜならこの時そう感じたのは確かだから)。


肝心の書評の続きだが、内容のボリュームに比べて主張が少ない点はマイナス。
熱い思いのようなものは伝わってくるが、もう少し「マニフェスト」的な簡潔なものの方が多くの読者を得られると思うし、読後も記憶に残るはずだ。


この人の主張は、要は「官僚は事務的な作業(正答のある問題)のみを行っていればよい、決断は政治家がやる」というのと、道州制を取り入れよ(地方分権を進めよ)というのと、自由化・民営化を促進し、より民に任せることで経済を活性化させよ(竹中路線の徹底)となる。
基本的には正しいし、賛成である(道州制に関してだけは、私の方で知識が無いので全面賛成とは言い難い。地方分権の推進は必要であると思うが)。


ああ、少しずつ思い出してきた。
おそらく「危険な部分」は、この人の主張する「寄付がもっと行われるような社会」というような理想社会の思い描き方と関係があるのだろう。
確かにそれは理想ではあるが、過去を理想化して語ることはノスタルジーでしかなく、やるとすれば「自発性」を「強制」することになりそうで、その辺りにきな臭さを感じたような気がする。
やや右よりの発想ということか。
他にもあったような気がするが、やはり思い出せないのでこの辺でとどめておく。
これからの彼の言動(党役から降ろされたといっても、この間サンプロにも出ていたし、このままで終わるような政治家でないことは確か)で気づいたらまた言及すれば良い。
『上げ潮の時代』も手元にある。


個人的には応援したい政治家である。
彼は、自分の特性も解っている(曰く、私はリーダータイプではなく、リーダーを陰で支えるタイプだ。要は裏番長なのだが、そういう人物は(腐敗)官僚と戦うためにも必要である。森さんも裏番長型なので、首相をしていたときよりもその前の幹事長時代や今のご意見番という立場の方が良い仕事をしている。その真逆にあたるのが小泉。だから、小泉・竹中・中川という組み合わせはある意味最強(官僚にとっては最凶)だったと言える)。
が、この本に関して言えば、あまり高い評価は与えられない。より少ないボリュームでも小沢の方がしっかりとしたメッセージを発している(まあ、器が違うといえばそれまでなのだが)。『上げ潮の時代』には期待したい(本当は読む順序が逆)。


彼個人を応援している人、彼個人に興味がある人、そしてサンプロの視聴者(なぜなら彼はサンプロによく出演するからだ)は読んでおくと良い本。
残念ながら、必読書ではない。