電波利権

電波利権 (新潮新書)

電波利権 (新潮新書)

書名:電波利権
著者:池田信夫


まあまあ。
同じく職場の先輩から貸していただいた本なのだが、こちらは同時期に読んでいた上記の本と絡み合う内容で、立体的な視点を持つのに大いに役立った。
なるほどね。
NHKの番組に政治家が介入してくる構図はこうなっていたのか。
そして、日本のマスメディアが変化に大して硬直的なのは、こういう風に、「利権」にがんじがらめになっていたからなのか、といったことがよく解った。
さすが内部にいた人の情報は的を射ている。


上記の書は外部の人からみた「マスメディアが生き残るにはこうするしかない」という常識的な分析なのに対して、本書を読むと「なぜそのような常識的なことが出来ないのか」ということがよく解る。


本書で得た新しい発見としては、米国だろうが欧州だろうがどこの国も自国の「利権」にがんじがらめになっているし、どこの国の企業も大小様々な「既得権益」と結びついていて、それを手放すようなことはしないのだ、ということがある。
考えてみれば当たり前なのだが、この国のあまりにもひどい体質を非難し、ことさらに欧米の「自由で民主的」な風潮を(或いは市場原理の働きを)賞賛するような論調にさらされ続けていると、その「当たり前」なことさえ忘れてしまう。
この国の「利権構造」は確かにひどいが、他の国も50歩100歩で、何も1から10まで他の国の言うことを聞いたり他国の制度を取り入れたりする必要はない(そもそもグローバルスタンダードとは、アメリカが新しく持ち出した自国に有利な「ゲームのルール」でしかないのだった)。
勿論、このままで良いというわけではなく、必要な改革は断行しなければならないが、何でもかんでも欧米諸国の例を持ち出してこの国の「特殊な」事情を批判しようとする言論には慎重になる必要があることを学んだ。


それにしても、この国の政府は情けないな。
せっかく技術者が世界標準レベルのものをつくっても、政治がそれをつぶしてしまっているようでは、いつまで経っても「技術立国」など成り立つわけがない。
先に「政治は可能な限り経済に介入すべきではない」旨書評で述べたが、このような不自然な寡占や独占を是正するために政治というものが存在するのであって、それをますます助長させるのであればなんのための政治なのか。
これも人の性がなせるわざなのであろうが、弊害があまりにも大きいので同情の余地はない。