約束 (角川文庫)

約束 (角川文庫)

書名:約束
著者:石田衣良


良書。
石田衣良は最近ダメダメなので、少しは見直しておかなきゃ、とこの本を買って読んだ。
まあ、この日会う予定の人が石田衣良好きだったのを思い出して慌てて、という不純な動機なんだけど。
それでも本に関しては「駄目なものは駄目!」(田原さん風に)と言うことを信条としている私。
一応いつもの批判的な視点で読みましたよ。
ええ、主に寝る前と寝起きに(大丈夫か?)。


本書は石田衣良の本領発揮といったところ。
どこの解説者が述べたことではなく、私が勝手に主張していることだが、石田衣良の特長は、「弱者をいたわる視点」と「もがき苦しむ弱者にさしのべられる救い」にあると思う。
IWGPが駄目になったのも「弱者への思いやり」が感じられなくなったからで(しかも主人公はいつの間にかスーパーマンになってしまった。なんてつまらない)、最近の恋愛ものからこれが欠けると、彼の作品は安っぽい官能小説(とはちょっと違うか。なんだろ。アダルト?)に成り下がってしまう。


本作品はまさに社会の「弱者」や不運にも「弱者」となってしまったものを対象にしており、彼らが精一杯生きる様を優しくいたわるような視点で書いている良書である。
個人的には、彼はこのような作品をもっと書くべきだと思う(或いはアキハバラ@DEEPのような現代の青少年(ただし欠落者)の冒険譚とか)。


1つだけ難点。
石田衣良の書く小学生は異常に大人びていて気持ちが悪い。
いや、小学生はもっとワンダーなこと考えてますって。
なんていうか。
彼は自分の小学生時代のことを忘れてしまったんじゃないかな。
そういう意味では読んで非常にいらいらするけどダレン・シャンくらいのアホな少年の方がよっぽと小学生らしい。
もう少し海外の子ども向けファンタジーを読んでみるべきだとは少し身の程知らずな忠告かもしれない。
でもま、そう思った。
ちなみに私は、石田衣良は「中年」(といっても比較的若い方)を書くのが上手いと思っている(「青年」は書きやすいだろうから敢えて。多分『1ポンドの哀しみ』の印象だろうけど)。
あれ?
石田衣良ってもう中年?