ウェブ時代 5つの定理―この言葉が未来を切り開く!

ウェブ時代 5つの定理―この言葉が未来を切り開く!

書名:ウェブ時代 5つの定理 この言葉が未来を切り開く!
著者:梅田望夫


良書。
著作業をしばらくお休みになり、サバティカルに入られる梅田氏の節目となる著作(記憶が曖昧。もう1冊ぐらい出される予定があったようななかったような)。
シリコンバレーを代表するリーダー達の名言集である。


何がよいかと言えば、まず、名言が英語の原文で収録されていること。
梅田氏の翻訳も秀逸だが、やはり原文でしか伝わらないニュアンスというものがある。
名言は可能な限りその国の言葉で。
次に、名言がテーマごとに整理されていること。
これもまた当然のことのように思えるが、良い言葉を並べてみたところで何の役にも立たない。
いったいこの発言の意味するところとは何なのか、梅田氏のテーマ付けによってそれが明確にされているのが良い。


しかし、何よりもこの本が素晴らしいのは、現在アメリカをリードするIT企業の創業者やメインスタッフの生の言葉を多く伝えているという本書の企画そのものである。
この国では、ジョブズやベゾズといったシリコンバレーの巨匠の言葉を聞く機会というのが意外にも少ない(ただし、私のアンテナの張り方が悪いという可能性はある)。
梅田氏の最大の功績の1つは、これまでの常識が通用しない新しい時代を生き抜いていくために必要な価値観を持ったこれらの人々の言葉をこの国にもたらしたことにある(まさにエバンジェリストである)。
今、(若くて)大望を持つ人、エリートたらんとしている人、何か新しいことをしたいと考えている人が聞くべき言葉は、間違えても現在のこの国の一流企業の経営者の言葉ではなく(勿論ためになる言葉も多いのだが敢えて)、ホリエモンのような結局何がしたいのか解らない起業家の言葉でもなく(勿論彼なりの理想もあったのだろうが、結局彼はテレビに出たかっただけなのではと私は思う)、パラダイムシフトと言っても過言ではないIT革命を引き起こしたシリコンバレーの鬼才達の言葉なのである。
昨今よく問題として取り上げられる、そして次の時代においてもこの国が世界の主要国であり続けるために克服しなければならない、悪い意味での「日本的」な部分を取り除くためのヒントは彼らの言葉の中に示されている。


ノーブレス・オブリージを兼ね備えた優秀な能力の持ち主が、全世界の善意を集結して行った事業が、そして「世界を良くしよう」という試みが、これほどまでに成功したのは恐らく人類史上初めてのことである。
この最強の「ウィンウィン」関係を否定するだけの合理的な要素はどこを探しても見つからない(強いていえば旧弊くらい。勿論旧弊は打破されるだろう)。
新たな時代は確実にこちらの方向に流れる。
まさに、「ウェブが負ける方にかける」のは愚かなことなのである。
いったい、このようなことを可能にしたエートスとは何なのか、そしてこのようにして再構築されつつある新しい時代で生きていくために必要な心構えとは何か。
答は本書に示されている。
一読されたし。