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- 作者: 野口悠紀雄
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2008/01/01
- メディア: 単行本
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著者:野口悠紀雄
本年度の大当たり。
稀に見る良書。
この著者、やはり凄い。
理系から文転した人(ただし大学受験時に文系に転じた人間は全く別の人種なので除く)は総じて凄い。
数字に強い文系と言えばだいたい想像がつくことと思う。
この人の凄いのは文系顔負けの豊富な知識だろう。
そして論理的思考能力。
さすが、「超」勉強法の著者。
本書は戦後日本の経済体制を「戦時経済体制」という観点で改めてまとめ直したものである。
前半は丹念な資料批判を元に書かれており、後半は著者自身の官僚生活の実体験も含めた回顧録に近い形で記述されている。
軍需省から商工省への看板の掛け替えから始まる終戦直後から高度経済成長に至るまでのこの国の経済政策の流れを詳述した前半は、とにかく「発見」だらけ(それだけ私が不勉強だったということが露呈しているが)で勉強になる。
確かに、このように見てみると著者の主張通り、これは紛れもなく「戦時経済体制」であり、「国家社会主義」そのものである。
我が国は「社会主義経済」だとはよく言われていることであったが、本書の説明によってそれがより具体的な形で理解できる。
著者の主観が入ってくる中盤からはややトーンダウンというか、教科書で教わったような話が多くなってきて退屈な部分が散見されるようになってくるが、それでもこれまで気づかなかったような事実の発見があり、これまで何の意味を持つのか解らなかった出来事を1つの流れとして整理することが出来るなど本書の効用は尽きない。
通して読むことで、戦後この国が辿ってきた経済史の経緯から、現在この国が抱えている問題が明らかになってくる。
少し前の日銀総裁を巡る問題も、本書を読む前とその後では視点がまったく異なる。
まさに、必読本である。
大学の講義の教科書(ただし一般教養レベルになるが)としてもよいぐらいの素晴らしい出来である。
本書を読むためには少々金融の知識が必要となる。
といっても難しい概念は丁寧に説明してあるから(ただ、「飛ばし」の技術などは本書の説明だけでは解らない。そこの辺りは諦めるしかない)、高校の政経程度の知識で十分読める。
大学生必読の書。