■
- 作者: 渡辺淳一
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2000/03/15
- メディア: 文庫
- この商品を含むブログ (2件) を見る
著者:渡辺淳一
ただの官能小説。
それだけ。
よくもまあ、通勤途上のサラリーマンが電車で読んでいたものだ。
何か深いものがあるのかと思いきや、何もなし。
ただ読みたかっただけなんでしょ
期待が過剰すぎたのかも知れない。
上巻の感想で予感したとおりだった。
先に読むべきはこちらで、その次に『愛の流刑地』を読むべきだった。
そうすればきっと思考実験の発展(そしてほとんど完成に近いその結末)に感動していたかもしれない。
期待していた社会との軋轢や関係者との摩擦など何も起きず、ひたすら濡れ場だけが続くのだから、読む方は辟易する。
もっと女の方の夫の嫌がらせがあるのかと思いきや、意外にあっさりと終わるし。
追い詰められた感もあまり出ていない。
背徳の臭いも感じない。
女の方に愛の狂気に近いものを少し感じたが、軽く首を絞めてみた程度でたいして実行には移さず、いつの間にか話が心中の方に誘導されていた。
男の方ももっと躊躇すればいいのに(実際に熱の入り方だけ考えれば、男はどうにかして自分が死ぬことを避けようとしたはずなのに意外にあっさりと同意してしまった)。
そうして破綻して修羅場が続いた方がよほど面白かったのだが、お行儀が良いのか視野が狭窄なのか知らないが、簡単に心中の方に流れた。
性愛の理想の極地などと評されることもあるが、あ、そ、の一言。
本人達はそれで良いのかも知れないが、私は気に入らないね。
少しも美しくない。
同じカタストロフィ(そもそもこれはカタストロフィなのか?ただの心中じゃないのか)ならば断然『ロミオとジュリエット』の方が美しい。
私は美しい物語の方が好きだ。