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あ、やつが来ました。
ん?なにやら大きなバッグを背負っております。
どうやらラケットバッグのようです。
ははぁ、おそらくテニスかバドミントンに行くところのようです。
しかし妙ですねぇ、テニスは水曜日、バドミントンは土曜日のはずですが・・・。
おや?
あのバッグ、やけにふにゃっとしていませんか。
うーん。
・・・さては!
やつは買い物に行くのではないでしょうか。
ラケットバッグはおそらく買い物バッグの代わりなのでしょう。
それにしてもなんとも妙な光景です。
くたびれたラケットバッグを背負って自転車をこぐ男。
しかも全身真っ黒。
さあ、やつははたしてどこに向かうのでしょうか。
それではこの先は中継車からお伝えします。
こちら1号中継車です。
ただいまやつは橋に差しかかったところです。
現在のところ順調に進んでいるように見えます。
どうやら昨日の疲れは見られないようです。
解説のヌルスさん、やつは調子がいいようですね。
[そうですね。これは珍しいことです。
ただ、資料によるとやつの筋肉痛は決まって二日遅れでくることになってます。
それから、急激に体調が悪化することもあります。
特に食事の後は要注意ですね。]
そうですか。
食事ですか。
確かにやつは今日、お昼を食べておりませんねぇ。
あっ!
今やつの自転車が左に曲がりました。
中継車も追って左折します。
・・・おや?
前方でやつの自転車がとまっていますね。
どうやらやつは靴屋に立ち寄っている模様です。
ここでいったんお返します。
今やつが建物から出てくるのが見えました。
もうじき発進すると思われます。
あ、今発進しました。
さて、やつの次の目的地はどこでしょう。
おおっと。
商店街の真ん中で止まりました。
店の中をのぞき込んでおります。
どうやら自転車に乗ったまま店の中をのぞくという悪い癖が出ているようです。
解説のヌルスさん、やつは何を探しているのでしょうか。
どうやらスポーツショップのようですが。
[そうですねぇ。
可能性としては、バドミントン用品が考えられます。
なんと言っても前日にバドミントンをしたばかりですから、道具に対する不満が出たとしてもおかしいタイミングではない。]
道具ですか。
しかし、現在使用しているラケットには何か不満があるようには見えませんでしたが。
[あるいはバドミントンのシャトルを探しているかもしれないですねぇ。
確か、先週でしたか、とある店で『1ダースじゃねぇと、売れねぇな、ボウズ』と言われて頭に来ていたようですから]
↑事実無根
お、どうやら店に目的の品はなかったようです。
また進み始めました。
この方向はおそらく・・・。
[書店ですね。
おきまりのパターンに入ってきましたな。]
書店では、リポーターのzeroさんがやつを待ちかまえております。
ここでzeroさんを呼んでみましょう。
zeroさん、やつは現れましたか?
はい、リポーターのzeroです。
現在、やつが毎週現れるという書店の中におります。
なかなかの品揃えのようです。
確かに、やつが好んで現れそうなところです。
ただ、以前やつが通っていた書店に比べるとやや人口密度が高く、子どもが多く、騒々しいところのようです。
ここのお店の人の話ですと、やつはほとんど毎週こちらに現れて、本を抱えたまま1時間ほど様々なコーナーを回ったあげく、紙袋一杯の本を買って帰っていくそうです。
最近は、コンピュータ関連のコーナーに長い時間いることが多い、とのことです。
この店の売り上げの内、月に4〜5万ほどはやつによるもので、取材に応じてくれた店員さんは、
『この人は本を食べて生きてるんじゃないかと思うと正直気持ち悪いですが、お店の売り上げに貢献してくれるのは嬉しいです。選んだ本を平積みの本の上に載せたまま本を選ぶのは他のお客様の迷惑になるのでやめてほしい』
と、やつに対する正直な感想を述べてくれました。
あ、話をしている内に、やつが現れたようです。
さっそく店員にマークされております。
やつはまず、新書の新刊コーナーに向かいました。
えーっと、既に・・・3冊です。
3冊の新書を抱えております。
早い、実に早い。
やつがタイトルを覗き込んでから「買うもの」に加えるまで3秒もかかっておりません。
いったいどんな金銭感覚をしているのでしょうか。
やつは既に新刊コーナーをパスして文学のコーナーに向かっております。
何冊か手にとって眺めております。
どうやらお気に入りの作家のハードカバー本に興味を持ったようです。
少し遠いので解りづらいですが田と次の字が見えます。
あ、しかし、平積みに戻してしまったようです。
珍しい。
[あれはおそらく、『文庫が出てないか』と思ったんでしょうね。
一番最後の出版事項を見ていたはずですから。]
さすが、解説のヌルスさん。
確かに、出版年は購入の判断に重要な要素ですねぇ。
[まあ、やつといえどもそのぐらいの判断はするということですな。
どうすれば1冊でも多くの本が買えるか、考えた末に身についた本能のようなものです。]
あ、やつがコンピュータのコーナーに向かいました。
現時点でやつが抱えている本は、次の通りです。
『日本の神話・伝説を読む』
『エスペラント』
『消える中間管理職』
『ヴェニスの商人の資本論』
『フリーメーソン』
『脳と性と能力』
『バイエル程度でクラシック』
『欲張りすぎるニッポンの教育』
ジャンルといい、著者といい、てんでバラバラです。
ただ、今のところ小説は選んでいないようです。
[まあ、気を引くタイトルがなかったんでしょう。]
まだ、動きません。
かれこれ1時間近く経過しようとしておりますが、
あ、ようやく動き出しました。
どうやら目的の書物は見つからなかったようです。
やつの不満そうな顔がそのことを物語っております。
それでもやつの抱えている書籍は増えているようです。
どうやら、
『デスマーチ』
『ずっと受けたかったソフトウェアエンジニアリングの授業1』
『ずっと受けたかったソフトウェアエンジニアリングの授業2』
を新たに加えたようです。
やつは、レジに向かいました。
どうやら本日の渉猟はこれにてお開きのようです。
では、放送室にお返しします。
中継でした。
ヌルスさん、このあとやつはどこに向かうんでしょうか?
[そうですね。
バッグの空き状態を見ると、帰りに大型スーパーによる公算が高いですね。]
大型スーパーですか。
それはまたどうして?
[やつのことですから、恐らくバッグに空きがある状態で帰ることはないでしょう。
靴と本以外に何か買うものを想定してあのバッグを持ち出したと考えられます。
そうするとあの空きを埋めるようなものは、現時点では食糧ということになります。]
なるほど、さすが、やつのことなら何でも知っているんですねぇ、ヌルスさん。
[ええ。本人ですから。]
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まあ、マスメディアを利用して、とにかく「一人でも多く」の人に受けるような曲を作ろうとしている職業アーティストの曲に狂気を求めるのはハリウッド映画に感動を求めるようなもので不毛極まりないことである(映画はラース・フォン・トリアーに限る)。
まあ、とりあえず「かくれんぼ」を聞くといい。
話はそれからだ。
最後まで見つからずにいれば
願い事はきっとかなうはずと
ふざけただけなのに息を殺し
まだ祈るつもりですか?私は帰るよ
鬼ですから
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新作が出ると同じタイミングで邦訳が出るほどの人気作家。
この本は男性的ニヒリズム破壊と女性的オプティミズム創造とが真っ向からぶつかって・・・という話。
これに人間の弱さと愚かさが絡まって絶妙な展開を見せる。
結末にも十分に納得がいった。
久々に快心の作品に出会った。
私は一人で乗り超えてしまったのだが・・・。
絶望と苦痛の度合いがまだ足りないのかも知れない。