ねぇ、スミス君
ビッグデータビジネスの時代 堅実にイノベーションを生み出すポスト・クラウドの戦略
- 作者: 鈴木良介
- 出版社/メーカー: 翔泳社
- 発売日: 2011/11/09
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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著者: 鈴木良介
■評価:可
情報:△ 新規性:○ 構成:△ 日本語:○ 実用性:△
難易度:易 費用対効果:△ タイトルと内容の一致:△
お勧め出来る人・用途 :「ビッグデータ」という言葉の意味するところが今ひとつつかめていない人・「ビッグデータ」という言葉を通して次の時代の社会が情報をどのように収集利用するか整理する
お勧めできない人・用途:「ビッグデータ」を利用したビジネスの企画または販促担当者・「ビッグデータ」を利用したビジネスを企画する
■所感
タイトルが『ビッグデータ「ビジネス」の時代』となっているが、内容的には『ビッグデータの時代』ぐらいが適当。
「ビジネス」とつけるといかにもそこに大きな「ビジネス」が眠っているかのような印象を受けるが(そして私もそう受け取ってしまったので不肖にも手を出してしまったが)、実際に本書が示しているのはあくまで「今」であり「未来」ではない。
確かに本書の最終章は、未来「予想」となっているが、裏打ちが弱くあくまで「予想」の範疇を超えない。
「ビッグデータ」が果たして一過性の「バズ」ワードとなるのか、あるいは「ロングテール」のような「ビズ」ワードとして定着するのか、今の時点ではどちらとも言えない状況である。
ただ、現在起こっていること、特にGoogleやAmazonなどの巨大な情報産業が、今、何を指標として動いているのかを理解するためには1つ解りやすい概念が現れたと思えば良いのではないのだろうか。
そして本書は最近騒がれるようになったその新しい概念「ビッグデータ」そのものを理解するためには適切な入門書であるといえる。
だが、現場担当者にはあまりお勧めは出来ない。
他の理論書の例に漏れず、本書もまた現場とは距離を置いた「分析者」の視点から先に踏み込めていない。
否、中途半端に「踏み込んで」しまっている分、読者を誤った方向に導く危険性があるのだ。
理論書はあくまで「理屈」でしかなく、実際の企画・マーケティング戦略を組み立てる際には、そこから「具体的な」ターゲットをイメージして、自らの「仮説」が当てはまるかどうか確認しなければならない。
そこが理論書と実用書、研究者とマーケッターの棲み分けのポイントで、領分を超えて両方に手を出そうとするとそれなりの能力と労力が必要になるが、残念ながらそういう意味では本書は力不足である。
とはいえ、無用の書ではない。
「ビッグデータ」という言葉を聞いたことがない人、言葉だけは聞いたことがあるけれども上手くイメージが出来ていない人は本書のような「まとめ」を読んでその内容を把握しておいた方が良い。
言葉そのものが残るかどうかは別として、次の時代はこれを制したものがその業界のリーディングカンパニーになることは間違いないだろうから。
■読了日
2012/02/12