目をつぶらない

書名:レシートを捨てるバカ、ポイントを貯めるアホ (朝日新書)
著者:坂口孝則


■評価:優
  情報:○ 新規性:△ 構成:○ 日本語:○ 実用性:○
  難易度:易 費用対効果:○ タイトルと内容の一致:△
  お勧め出来る人・用途 :節約したいリアリスト・現実と向きあってしっかりと節約をする
  お勧めできない人・用途:節約したいエスケーピスト・労せず節約が出来る秘訣を見いだす


■所感
 著者自らが述べていることであるが、本書の結論は以下の1行にまとめられる。

何にいくら使っているかを正確に把握し記録すること

 節約に必要なのはこれだけである。


 何かに似ていると気づかれた方は、なかなかの読書家かもしれない。
 そう、これも著者が文中で述べていることであるが、この原理、岡田斗司夫さんのベストセラー『いつまでもデブと思うなよ』とまったく同じ結論なのである。

いつまでもデブと思うなよ (新潮新書)

いつまでもデブと思うなよ (新潮新書)

 現実から目を反らさずに、じっとそれを見つめ続けること。
 そうすれば、自然にどうすれば目的を達成出来るか、自ずと明らかになってくる。
 
 
 問題は、これがなかなか難しいということだ。
 誰もが意思の強いリアリストならば、そもそもこのような実用書は無用の長物以外の何者でもない。
 それこそ「節約」の対象として真っ先に切り捨てられてしまうだろう。
 だが、実際にそのような強固な意志を持った人間はそういない。
 だからこそのHowToなのである。
 この順番は逆さにしてはならない。
 まず、原理原則があり、それを達成するための方法として、HowToがある。


 本書が優れている点は、この構成にある。
 即ち、上記の原理原則が如何に大事であるかを読み手にしっかりと納得させた上で、具体的な方法の提示を行っている、ということである。
 しかもこの原理原則は、著者の実体験から発するものであり、そのことが尚一層納得感を強めている。
 
 
 「節約」を本気で考えている人にお勧めの良書である。
 ただ、何事にも王道はない、それが解っている人でなければ本書の助言は約700円の「浪費」以上のなにものでもないだろう。
 
 
 余談だが、良書を送り続けている著者が、突然駄本を乱発することがある。
 そのようになってしまう危険な兆候の1つには「自慢話を始める」(しかも書く本書く本似た様な自慢話ばかり)というものがある(最初から「自慢話」が出てくるような著者の本は、もうその時点で読む必要がない)。
 本書の序盤を読んでいる時に、あ、これはもしかして・・・と思ったが、上述のように本書に関しては、著者の経験の話が重要な説得材料となっているため、必要な内容であったと言える。
 ただし、次作は要注意である。
 『営業と詐欺のあいだ』『会社の電気はいちいち消すな』など、出す本全てが良書であった信頼できる著者であるだけに、出来るだけ失望はしたくない。


■読了日
2011/01/14