素直に聞けば済むことなのだが

勝手に絶望する若者たち (幻冬舎新書)

勝手に絶望する若者たち (幻冬舎新書)

書名:勝手に絶望する若者たち (幻冬舎新書)
著者:荒井千暁


■評価:優
  情報:○ 新規性:○ 構成:△ 日本語:○ 実用性:◎
  難易度:易 費用対効果:◎ タイトルと内容の一致:◎
  お勧め出来る人・用途 :「今の会社は人を育てていない」と思っている人・自らの甘えを反省する
  お勧めできない人・用途:現状に不満がある人・現状の不満を環境のせいにする


■所感
 若者に共通する不満、

現在の職場は人を育てていない

 に対して、新しい回答を提示している良書。
 よくある回答としては、「会社は学校じゃない」というものであるが、本書で示されている答はより厳しいものである。

だって、君たち聞きに来ないじゃないか

 ごもっとも。


 少子化の中で、若い人は「構われること」に馴れすぎている。
 しかし、会社では、みな限りある資源(時間!)を効率的に活用して最大の成果をあげなければならない。
 まして昨今の余裕のない状況では特にそうである。
 本書の中盤は、職場でいかにOJTが機能していないかに割かれており、確かに以前に比べて新人に「教える」ことが困難になってきているという状況は否定できない。
 だが、それでも「教えてください」という真摯な頼みを一顧だにしないような人は本当に少数である。


 本書では、若者の「教えてもらえない(のに成果を出さないと叱られる)」という不満と「聞いてくれないと何で困っているか解らない(し、聞きに来るのが筋だろ)」という上司や先輩のスタンスとのズレを見事に描き出している。
 また、本書では若者の「焦り」の一因として、「目的」がはっきりしすぎていること(柔軟性がなく視野狭窄であること)を指摘しているが、これは多くの「絶望」している若者に当てはまる事実であろう。


 「勝手に絶望する」のタイトルは言い得て妙である。
 自分が当てはまると思った人は是非手にとって読んでみるべきである。
 違った道が拓けてくるかもしれない。


■読了日
2010/09/24