緩やかに崩壊へと向かう国家

なぜ若者は保守化するのか-反転する現実と願望

なぜ若者は保守化するのか-反転する現実と願望

書名:なぜ若者は保守化するのか -反転する現実と願望
著者:山田昌弘


■評価:良
  情報:○ 新規性:△ 構成:△ 日本語:○ 実用性:△
  難易度:易 費用対効果:○ タイトルと内容の一致:○
  お勧め出来る人・用途 :最近の若者の現状を実データを元に分析したいと思っている人・若者の「安定志向」に関するデータからこの問題について考察を行う
  お勧めできない人・用途:少子化問題など最近の若者の問題についての解決策を模索している人・問題についての解決策のヒントを得る


■所感
 さすがは山田さん。
 徹底して「数値データ」を論拠にした考察を行っている。
 社会学者の鏡である。
 アンケートデータの類をどこまで真に受けて良いかは門外漢の私には判断しかねるが、これまでの彼の著作を読む限りはかなり信頼性の高いものであると考えて良いだろう。
 少なくともある程度の「定量化」には成功しているので納得感はある。
 (一般向けの書物としてはこれで十分)


 ただし、本書は山田さんの代表作

希望格差社会―「負け組」の絶望感が日本を引き裂く

希望格差社会―「負け組」の絶望感が日本を引き裂く

などとは異なり、何かインパクトのあるフレームワークを提供しているわけではない。
 その点は(コアな読者としては)やや期待はずれである。
 本書が書き下ろしでなく、連載のまとめであることがその原因かも知れない。
 (さすがに3〜5頁の積み重ねで何か大きなフレームワークを構築することは至難の技だと思われる)


 本書に関しては、あくまで「現状把握」の書籍だと思って読むと良い。
 勿論著者は様々な提案もしているが、その提案自体は、あまり良策とは思えなかった。
 「負の所得税」などあまり効果があるとは思えない。


 しかし(なんども逆接を使っているのでよくわからなくなってきたが、本書の評価は「良」で変わらない)、若者が「保守化」する原因については、かなり正確な分析をしていると思われる。
 この問題について興味がある人、この問題について取り組む立場の人は一読しておくべき本であろう。


 「若者パッシング」の本ではないのでお間違いなく。


■読了日
2010/05/09