誰も神には逆らえない
- 作者: クリス・アンダーソン,小林弘人,高橋則明
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2009/11/21
- メディア: ハードカバー
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著者:クリス・アンダーソン, 小林弘人, 高橋則明
■評価:秀
情報:◎ 新規性:○ 構成:△ 日本語:○ 実用性:◎
難易度:やや難 費用対効果:◎ タイトルと内容の一致:◎
お勧め出来る人・用途 :これから30年のビジネスの展望についてのビジョンを模索している人・新しい時代に適応したビジネスモデルについて考察する
お勧めできない人・用途:IT技術を利用したビジネスモデルの構築を考えている人・ITをベースにしたビジネスモデル構築のヒントにする
■所感
まだ読んでいない人は即購入して読んでおくべき本。
これから30年のビジネスを占う上で必読の書であることは間違いない。
最近の名著で言えば『キャズム』や『イノベーションのジレンマ』に比肩すると言って過言ではない。
ただ、本書に"IT"を過剰に期待するのは大間違いである。
"IT"はもう既に「あって当たり前」の時代になっている。
今さら「ムーアの法則」にさかのぼってその正当性を議論するものはいないだろう。
本書でも"IT"は取り上げられているが、あくまでそれは「前提」であって、議論の的ではない。
強いて関連性の強いキーワードを述べるならば、「コモディティ」の方だろう。
議論の争点は"IT"「によって」何が起きるかから、"IT"「によって起きたことから」何が起きるか、に移行しつつある。
その鍵となる言葉として最近注目されているのが「コモディティ」であり、これは本書を理解する上でも重要なタームである。
本書が「何でないか」の記述が長くなった。
いや、せっかくだから、最後までこの書評は本書が「何でないか」について述べることに徹底しよう。
(本書が「何であるか」についての論述は、それこそ巷間に溢れているだろうから)
本書は思想の書ではない。
本書において"FREE"は理想の社会でもなく、多くの生産者にとって打ち倒すべき諸悪の根源でもなく、ただただ「必然」である。
著者はこれを絶妙なたとえで表現している。
すなわち物が重力に従って落下するように、"FREE"を止めることはできない、と。
(余談だが、これは竹中平蔵さんの「グローバリズム」に対する姿勢とまったく同じである)
本書が良書たる所以は、その"FREE"の衝撃についてのレポートの部分ではなく、また、"FREE"に対する人々の様々な反応やそれに対する反論の部分でもなく、"FREE"という世界におけるビジネスモデルの(4つ)フレームワークを示したところにある。
仮に本書が古典として読まれることになるとすれば(おそらくそうなるだろうと私は確信しているのだが)、このビジネスモデルのフレームワークこそ重要なポイントであると示されることであろう。
以上の点を踏まえた上で、本書を読まれたし。
■読了日
2010/04/18