愛するということ 新訳版

愛するということ 新訳版

書名:愛するということ
著者:Erich Fromm (鈴木 晶;訳)


駄本。
一言で言うと、「道徳的すぎて詰まらない」。


途中で何度も投げだしそうになったが、かのフロムの著作ということで、とりあえず読んでおこうと最後まで読み通した。
が、最初に感じた通りで、完全に時間の無駄だった。


そもそもフロムがヒューマニストだったなんて聞いていない。<お前の勉強不足だ>
私は勿論アンチ・ヒューマニストである。
何せニヒリストだから。
(私が忌避しているのは、サルトルヒューマニズムのことではない。念のため)


彼自身が自分の主張が「現実とはかけ離れた理想」であることを認めているが、そもそも私は「そんなのは理想でもなんでもない」と感じた。
だいたい、そんな道徳的な社会などつまらなすぎるではないか。


以上は私の個人的立場からの批判である(従って勿論十分に偏向している)が、客観的に本書を評しても、やはり本書は駄本だとしか評価できない。
致命的な欠点は、恋愛に必然的に含まれる「狂気」について記していないことである。
著者はこれをばっさりと切り捨ててしまって、その後はまったくそれに目を向けようとはしない。
つまり、現実から完全に目をそらして虚構の中で自身の理想論を展開しているのである。
これは悪い形而上学の典型的なパターン。
著者の理想が自分の理想とぴったりと重なる人にとっては、読んでいて心地よいのだろうが、そうでない人にとっては、そのような空論を延々と聞かされても退屈なだけである。
もう1つ、「恋愛」がしばしば秩序に対するチャレンジとなること(ref. 渡辺淳一『愛の流刑値』)についても、本書は目をつぶっている。
それで、恋愛が語れるものか。
断じて否である。


なんだかよく解らないけど「友愛」って、要は、こんなもんなんだよ。