「未納が増えると年金が破綻する」って誰が言った? ~世界一わかりやすい経済の本~ (扶桑社新書)

「未納が増えると年金が破綻する」って誰が言った? ~世界一わかりやすい経済の本~ (扶桑社新書)

書名:「未納が増えると年金が破綻する」って誰が言った? ~世界一わかりやすい経済の本
著者:細野 真宏


良書。
目から鱗」とは、まさにこのことを言う。
今まで誰も指摘してこなかった(単に私の「アンテナ」にひっかからなかっただけかもしれないが)盲点を突いてきた。
さすが細野さん。


「本書こそ書きたかった本である」と述べているように、本書は細野氏の著作の中で初めて細野氏本人の主張が明確に述べられている(その前の書でも、良く読むとある種のメッセージは読み取れるのだが、明確に主張をしているのは本書が初めてだと思われる)。
私には、細野氏の著作を読み続けてきたので、その言葉の意味するところがよく解った。
なるほど、これが説明したかったのですね、細野さん。


本書そのものは、前著『書名:細野真宏の数学嫌いでも「数学的思考力」が飛躍的に身に付く本!』(書評は、こちら)を読んでいることを前提として書かれている。
未読の読者のために、前半に前著の要点が掲載されているが(前著を読んだ者としては、その分のページ数がもったいないと思うのだが)、それよりは前著を読むことを強くお勧めする。
まあ、細野氏の経済に関する著作(数学の参考書ではない)を1冊でも読んだことのある人であれば、本書の内容は解るので、その点は心配ない普段日経新聞を「読んで」いる人なら、本書の内容の理解に苦しむことはまずない。
何せ、あの細野さんが書いているのである。
説明が丁寧すぎても、「解らない」ということはありえない。


肝心の内容だが、冒頭に述べたように、まさに「目から鱗」という表現がふさわしい。
マスコミのキャンペーンにも等しい報道の中では、しばしば問題の「本質」が見失われてしまうが、本書の細野氏の指摘もまさにその通りである。
「未納」が騒がれている(た)年金問題の本質は、「未納」などにはない。
考えてみれば解るのだが、大半の人が加入している厚生年金は源泉徴収形式となっており、滅多に「未納」の問題など発生しないのである(もし「未納」があるとすれば、それは悪質な犯罪である)。
言われてみれば「コロンブスの卵」であるが、細野さんに指摘されるまでは(少なくとも私は)全くこの単純な事実に「気付か」なかった。
いかに普段、「数字で考える」習慣がないか、反省させられる。


本書では、更に現在ほとんど無批判で礼賛されている「完全税方式」に対する批判がまこと丁寧になされている。
詳しくは是非本書を読んでもらいたい。
年金問題」の本質がどこにあるのかがよく解るはずである。


国民必読の書。