書名:ズバリ!先読み 日本経済 改革停止、日本が危ない!
著者:竹中平蔵, 田原総一朗


タイトルからはとても想像できないが、良書。
こんなタイトルじゃ売れないと思うけどなぁ?
私が購入したのは、勿論田原さんの本だから。
田原さんの新刊は出版と同時に即購入、これ基本。
しかも、最も聞きたかった竹中氏との対談。
これは即買いと共に即読まなきゃ駄目でしょ。


本書は「小泉・竹中(・木村)が日本を駄目にした」、「構造改革が日本経済を滅茶苦茶にした」という批判を真っ向から迎え撃つファイトに溢れた対談本。
と、紹介しているように、私個人も「田原×竹中」派(田原さんは間違いなく竹中氏を支持している)であり、「改革が止まった(というメッセージを国内外に伝えてしまった)から日本経済は駄目になっている」という竹中氏の主張に共感を持っている。


高野氏(「インサイダー」編集長)が何度も述べているように、この国の経済は未だに「発展途上国型」の古い構造のままであり、一刻も早く低成長モデルに対応した経済構造へと移行する必要がある。
構造改革」はより徹底して続けるべきであったのであり、それが中途半端なまま頓挫したから今の低迷(特に株価、即ちこの国の評価)がある。


本書の中で竹中氏は自身の改革に対して向けられたありとあらゆる批判に対して丁寧に反論している。
どのどれもがしっかりとした筋の通ったものである。
竹中氏を批判する者の主張と竹中氏の反論を比較して見れば、どちらの言っていることの方が筋が通っているかは一目瞭然であろう。
(もっとも、感情的に竹中氏を批判する人は、竹中氏の反論など読もうとすらしないのだろうが)


本書を読むと、竹中氏のこのような思い切った行動を支えていたのは、「変人」小泉氏の断固たる態度・行動であったことが解る。
確かに小泉氏本人は無茶の目立つ危険な首相だったのかもしれない。
だが彼は、誰の言っていることを聞くべきかという「直感」と覚悟(たとえそれがポーズだったとしても、実際に彼は逃げていないのだから、これは正しく評価すべきである)を備えていた。
成し遂げたことは十分ではなかったが、必要なことであった。
(不良債権の処理などは特に評価すべき事項であろう)


もう一度このコンビでこの国の経済を根本から立て直して欲しい、そう願いたいところであるが、それは叶わないようだ。
(小泉氏が世襲に走ってしまったのは非常に残念である)
少なくとも竹中氏には、まだまだ「正論」を主張し続けて欲しい。
出来ればもう一度入閣してもらって・・・と思うのだが、なんだか敵も多そうだから難しいか。


本書の最後の提言の中に、しっかりと「教育」の話が入っているという点でも、私は竹中氏を高く評価する。
これは誰かに話したが、マスコミがあおり立てた割に少しも盛り上がらなかった、直近の自民党総裁選では、候補者の誰もが「教育」の話をしていなかった(どこかではしたのかも知れないが、少なくとも私の耳には入らなかった。余り関心を持って見ていなかったから確たることは言えないが、少なくとも「主な」主張の中に「教育」の話が盛り込まれていなかったのは確かだと思われる。
これからの経済情勢を考える上で「教育」のことを全く語らないというのは、政治・経済に携わる者として資質を問われる事項である。


本書の中で唯一、竹中氏の「移民積極受け入れ」の点に関してだけは、私は意見を異にするが、それはまた別の機会に記すこととする。


学生、特に政治・経済の道を目指している学生に読んで欲しい本。
大人は頭が固いからね。