おひとりさまの老後

おひとりさまの老後

書名:おひとりさまの老後
著者:上野千鶴子


まったくもって時間の無駄。
この類の本の場合、期待される内容は1.ノウハウ2.考え方のヒント、のいずれかであると思われるが、本書はそのどちらでもない。
強いて言うなら、「おひとりさま」のすすめ。
それならそのようなタイトルをつければよいのだ(売れないと思うけど)。
さすがフェミニスト
自分の価値観が普遍的で正しいと信じて疑わない。


収録されている情報も、著者の自慢話か、希有な成功例(実際には最期まで見てみないと成功と言えるかどうかわからないのだけど)のみ。
これを読んでどうしろというのだろう。
「この本を読んで勇気づけられました」という読者評が目に浮かぶが、そういう「自己肯定感を得るための本」には用がない。
少なくとも私は。


まして、これは美学ですらない。
ただのわがままだ。
世の中には自分のわがままを貫き通しているのに何故か社会に適応しているものがいて(そのようなものを強者という。運も実力の内)、その人たちの意見や体験談は大概、我々のような弱者にはなんの役にも立たないものなのである。


「独りで、いかに生きるか」についての本ならば、中島義道の書いているものの方がよほど役に立つ。
彼は「独りで」生きるために、周囲のものとことあるごとに衝突し、悩み、苦しみ、その中で自分のスタイルを見つけ出して来た人だからだ。
これは性の違いの問題ではない。
強者か、弱者かの問題である(そういう意味では女性に比べて精神が不安定な男性は弱者と言えなくもない)。


確かに、古い価値観にしがみつく必要はない。
だが、それこそ個人の自由であろう。
彼らが独りになることを極度に恐れているのは幻想に惑わされているからではなく、本当に独りでいると寂しいからであって、やせ我慢してまで独りになることはない。
騙されてはならない。
この手の人は天来の孤独好きなど変わった性格を持つ強者であり、その言説を真に受けてそれを実践したからといって同じように幸せになるとは限らないのだ(そもそもそのような本人が実際に幸せであるかどうかすら解らない。やせ我慢かも知れないし、必死に自己肯定したがっているだけかもしれない。幸福な人に対するルサンチマンかも知れない)。
まあ、勿論、この手の人の言説を信じて実践してみるのもまた個人の自由なのではあるが。


話は大きく逸れたが、この本の評としては「全く役に立たない」という表現が適切であると思われる。