終面は雨の味


コートいっぱいに水を抱え込んで、男は玄関で崩れ落ちた。
・・・・・・
疲れた。
成せるだけのことは成した。
悔いはない。
後は天命を待つのみ。


傘を持たずに家を出た。
晴れ男の意地にかけて、終面前に雨は降らせない。
我が意志の合間を縫うように降る霧雨。
やらせはしない。
そして終面。
昨年一度も迎えることのなかった終面。
コンディションは中の下。
朝は頭が回らない。
冷たい水でほおを引き締め、一度、二度、と自分ビンタをくれてやる。
とる。
絶対に内定をとる。
自らに念を押す。
これがとれなければ後はないと思え。
そして・・・。
最後の関門はやはり一枚も二枚も上手だった。
人生経験が違う。
この人に何を言っても「青二才」の一言で片づけられてしまう。
そして、私は唯一の対抗手段、若さ故の突進力を既に使い果たしている。
果たして、通用するのか。


帰り道。
独り。
何も今日に始まったことではない。
ずっと独りだった。
周囲からの手を振り切り、自ら選んだ道だ。
さあ、顔を上げろ。
立ち向かうって決めたんだろう。


土砂降り。
さすがの晴れ男も神通力が尽きたようだ。
雨。
今は潔く打たれよう。
これは敗者を慰める雨ではないのだから。


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